2020年1月〜10月末に病院で、新型コロナウイルス患者に近い環境で471カ所空気を調査した結果をご紹介します。
【新型コロナウイルスのエリア別検出率】
病室などの臨床エリア 8%
トイレ 24%
公共エリア 33%
実は、一般的なウイルス量の感染者のいる病室の中より、待合室、トイレ、浴室などの方が要注意!なのです。
G. Birgand, et al. Assessment of air contamination by SARS-CoV-2 in hospital settings. JAMA Network Open, 2020;3(12):e2033232, December 23, 2020.
公共トイレ、気をつけよう
また、2020年2 月ー 3 月に武漢の病院でエアロゾルに関して調査した研究では、エアロゾル中の SARS-CoV-2 RNA の濃度は、隔離棟や換気のある病室ではとても低く、患者のトイレのエ リアで高かったそうです。さらに多くの公共エリアでのウイルスは検出されませんでしたが、混み合うエリアでは検出され、人混みの中に SARS-CoV-2 のキ ャリアが存在していることが示唆されました。ただし、精力的に消毒を実施することで検出できないレベルまでウイルス量を減らすことができることも示されています。
これだけ感染者が増えている現在は、病院内だけでなく公共のトイレも気をつけるべき場所と言えるでしょう。
Y. Liu, et al. Aerodynamic analysis of SARS-CoV-2 in two Wuhan hospitals. Nature, 582, 557-560, June 25, 2020.
接触がなくても感染があった中国のアパート
中国の高層アパートで接触のない3家族9名で感染者が出ていました。感染者が出た家族は、便所の廃管によって繋がれた 3 つの垂直に並んだ部屋に居住されていて、煙突と排気口を通じてのウイルスの存在するエアロゾルが認められました。
M. Kang, et al. Probable evidence of facal aerosol transmission of SARS-CoV-2 in a high-rise building. Ann Int Med, December 15, 2020.
便中の新型コロナウイルスは長生き
便中には、どの程度のウイルスがいて、どのくらいの期間生きているのでしょうか?
1070 検体のウイルス RNA 検出率を検討した 研究では、喀痰 72%、咽頭拭い液 32%、便 29%で、尿検体では検出されませんでした。2 人の患者で、生きたウイルスが便で認められました。
W. Wang, et al. Detection of SARS-CoV-2 in different types of clinical specimens. JAMA, March 11 (online), 2020.
中国の病院での研究では、便中のウイルス の持続の長さは22日で、呼吸器検体(18 日) や血清検体(16 日)よりも有意に長かったという結果が出ていました。
S. Zheng, et al. Viral load dynamics and disease severity in patients infected with SARS-CoV-2 in Zhejiang province, China, January-March 2020: retrospective cohort study. BMJ 2020;369:m1443.
唾や痰に入っているウイルスほどは多くありませんが、便中にはコロナウイルス が排出されていて、しかも長生きだということを知っておく必要があるでしょう。だからこそ、トイレの空気中にはコロナウイルスが漂っているのです。
トイレの個室内でもマスクは外さない方が得策です。さらに、手動洗浄の場合は洗浄ハンドルを触った手には、ウイルスがついている可能性が高いです。トイレの内鍵も同様です。公共トイレを使用したら、石鹸で丁寧に手を洗い、アルコールで手指消毒しましょう。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のためには、ひとりひとりの行動が鍵となります。
感染症状で苦しむ人、経済的、活動の制限などで困る人をこれ以上増やさないために、「今自分にできることは何か」考えたいですね。