「https://mindful-health.co.jp/info/wp-content/uploads/2022/03/yukiko-kanada-mBuAzPIYKQA-unsplash.jpg」のアイキャッチ画像 牡蠣で血糖値が下がる?牡蠣の「亜鉛」は美肌や筋肉量アップにも効果的!

牡蠣で血糖値が下がる?牡蠣の「亜鉛」は美肌や筋肉量アップにも効果的!

「健康診断で血糖値が高いといわれた」「血糖値を下げたい」と悩んでいませんか?

血糖値を下げる働きがあるのは、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンです。「インスリン」の産生には牡蠣に多く含まれる「亜鉛」が関わっており、牡蠣を食べることで血糖値を下げる効果が期待できます。

牡蠣には「亜鉛」意外にも多くの栄養を含むため、健康の維持や美容を高めるためにも積極的に摂りたい食材です。この記事では「亜鉛」と血糖値低下の関係について医師が解説します。

目次

牡蠣に含まれる栄養素の特徴

牡蠣は牛乳のように多くの栄養をバランスよく含むことから「海のミルク」といわれています。健康を維持するため、牡蠣が旬の季節は積極的に食べるのがおすすめです。

牡蠣に含まれる栄養素①:亜鉛

牡蠣は、他の食材に比べてダントツで多くの亜鉛を含有しています。

▼食材100gあたりの亜鉛含有量

・牡蠣 14g
・カタクチイワシ 7.9g
・牛ヒレ 6.5g
・ラムもも 3.5g
・うなぎ 2.7g
・若鶏もも(皮つき) 1.6g

亜鉛を積極的に摂ると、血糖値が安定しやすくなります。また、免疫力を高める効果も期待できるため、風邪や感染症などの予防としても効果的です。

ただし、亜鉛の吸収率は約30%と推定されています。亜鉛が豊富な食材を食べたからと言って、すべてが身体に吸収されるわけではありません。

牡蠣に含まれる栄養素②:タンパク質

牡蠣は、良質なタンパク源です。

牡蠣のタンパク質には、多種類のアミノ酸がバランスよく含まれています。食事から摂るべき9種類の必須アミノ酸をすべて含んでいるため、体内でタンパク質合成を効率的に行えるのです。

▼9種類の必須アミノ酸

・ヒスチジン
・イソロイシン
・ロイシン
・リシン
・メチオニン
・フェニルアラニン
・トレオニン
・トリプトファン
・バリン

また、牡蠣に豊富に含まれるタウリンには「肝臓を活発にする」「コレステロールの吸収を抑える」「血圧を正常に保つ」など、健康を保つために多くの重要な役割を果たしています。

牡蠣に含まれる栄養素③:鉄分

牡蠣は、鉄分を多く含む代表的な食品の1つです。

鉄分をしっかり摂ることで、貧血予防や疲労回復に役立ちます。女性は月経や妊娠などで多くの鉄分を必要とするため、牡蠣を積極的に食べるのがおすすめです。

牡蠣に含まれる栄養素④:ビタミンB群

牡蠣は、ビタミンB群を多く含む食材です。

▼牡蠣に含まれるビタミンB群

・ビタミンB1
・ビタミンB2
・ビタミンB6
・ビタミンB12

ビタミンB1は水溶性のビタミンで、糖質の代謝に欠かせない栄養素です。ビタミンB2、B6は疲労回復に役立ちます。

ビタミンB12にはコバルトというミネラルが含まれ、貧血予防に効果的です。また、ビタミン12には神経機能を正常に保つために重要な機能もあります。

「亜鉛」は現代人に必要な栄養素

牡蠣は多くの栄養素を豊富に含んでいる食材ですが、中でも現代人に欠かせないのが「亜鉛」です。現代の生活は「亜鉛」が不足しやすいため、食べ物から補うことが重要になります。

亜鉛の働き

「亜鉛」は全身の細胞内に存在し、免疫機能やDNA合成、細胞分裂や傷の治癒に重要な役割を果たしています。子どもの成長サポートや、適切な味覚・嗅覚を保つためにも必要な栄養素です。

▼亜鉛の働き

・インスリンを作る
・たんぱく質の合成
・骨の成長
・精子を作る
・活性酸素を除去
・味蕾細胞
・免疫反応

しかし、私たちの身体に「亜鉛」を溜め込んでおく機能はありません。そのため、毎日食べ物から適正量の亜鉛を取り続けることがとても大切です。

亜鉛は血糖値を下げる

身体の中で亜鉛の濃度が最も高いのは、インスリンの分泌に関わるすい臓のβ細胞です。

食後に血糖値が急上昇すると、すい臓からインスリンが分泌されて血糖値を下げます。血糖値を下げて安定させる働きがあるホルモンは、インスリンだけです。

亜鉛が欠乏すると、インスリン分泌が減少することが報告されています。「亜鉛」はすい臓のβ細胞において、インスリンの結晶産生に必要不可欠な栄養素なのです。

近年、糖尿病患者に亜鉛のサプリメントを与える研究が行われました。その結果、亜鉛のサプリメント摂取と「空腹時血糖値」低値との関連が認められています。

「亜鉛」不足によって多くの不調が起こる

亜鉛は健康を維持するために必要な栄養素なので、不足するとさまざまな不調が起こります。

▼亜鉛不足による不調

・成長障害
・味を感じにくくなる
・貧血
・食欲不振
・皮膚炎
・生殖機能の低下
・慢性下痢
・脱毛
・免疫力低下
・低アルブミン血症
・神経感覚障害
・認知機能障害

亜鉛が不足すると、タンパク質の合成やDNAの合成がうまく行えません。すると、乳幼児・乳児の成長障害が起こりやすくなるのです。

また、亜鉛は味を感じる「味蕾細胞」の産生に関連しているため、味覚を感じにくくなることも亜鉛不足による代表的な症状です。その他にも、亜鉛不足によるさまざまな不調との関連が分かっています。

添加物やアルコールで亜鉛の濃度が低下する

食品添加物によって、亜鉛の吸収が阻害されてしまう場合があります

食感をよくしたり、色や風味を安定させる「フィチン酸」「ポリリン酸」も亜鉛の吸収阻害に関連する食品添加物です。インスタント食品やファストフードなど、加工食品に多く使われています。

また、アルコールを摂取すると亜鉛の排出が促進されます。せっかく牡蠣やその他の食材から亜鉛を摂っても、吸収される前に身体の外へ出てしまうのです。

現代人の生活は、亜鉛が不足しやすい環境にあります。できるだけ外食や加工食品、アルコールの摂取を控えて亜鉛を積極的に摂ることが大切です。

「亜鉛」の摂取目安

亜鉛の摂取目安は、性別や年齢によって異なります。

牡蠣に含まれる亜鉛の量は、可食部100g(約5粒)あたり約14mgです。このうち30%が吸収されるとすると牡蠣100gで約4.35mg、1粒あたり約0.87mgの亜鉛を吸収できる計算になります。

年齢・性別亜鉛の1日の摂取基準牡蠣の量
18~74歳の男性11㎎約12個
75歳以上の男性10㎎約11個
18歳以上の女性8㎎約9個
(日本人の食事摂取基準(2020年版)による1日摂取の推奨量)

通常の食事で、亜鉛の過剰摂取の心配はほとんどありません。

ただし、亜鉛の過剰摂取は銅欠乏、貧血、胃の不調など様々な健康被害が生じることが知られています。亜鉛のサプリメントを使う場合は過剰摂取にならないよう、牡蠣を食べる量は控えめにするといいでしょう。

こんな悩みには「亜鉛」の摂取がおすすめ

亜鉛の摂取によって、さまざまな悩みが解消されます。牡蠣を食べたり、サプリメントを活用したりしながら、亜鉛を上手にとってQOL向上を目指しましょう。

▼亜鉛の摂取が効果的な悩み

・抜け毛や薄毛
・生殖機能の悩み
・肌トラブル
・味覚障害
・血糖値の上昇
・筋肉量の低下

男性によく聞かれる抜け毛や薄毛、生殖機能の悩みには亜鉛が効果的です。男性だけでなく、女性に嬉しい美肌効果も期待できます。

亜鉛が不足すると味覚が低下するため、味を感じにくくなってきたときにもおすすめです。添加物やアルコール摂取が多く、味覚障害が気になる人は、亜鉛を積極的に摂りましょう。

血糖値が高い人は、亜鉛を摂ることで安定しやすくなります。年齢とともに減少する筋肉の維持にも、亜鉛の摂取が不可欠です。

牡蠣を食べるときの注意点

牡蠣を食べるとき、気をつけなければならないのが「ノロウイルス」です。

生または加熱が不十分な状態で牡蠣を食べると、食後1〜2日のうちに症状が現れるといわれています。どんなに新鮮な牡蠣でもノロウイルス付着の可能性があるので、牡蠣を食べるときは新鮮なものを素早く食べることが大切です。

新鮮なものを食べよう

ノロウイルスによる急性胃腸炎を予防する原則は、新鮮なものを食べることです。

水揚げされてから時間が経てば経つほど、牡蠣の中でウイルスが増えていきます。生食用は新鮮なものですが、温かい部屋でダラダラと食べ続けると当たりやすくなるので注意してください。

お店で生牡蠣を食べるときは信頼できるお店を選び、冷却用の氷が解けないうちに食べましょう。加熱用の牡蠣を買ってきたときは、生で食べないようにしてください。

加熱調理後も素早く食べよう

加熱調理した牡蠣でも、時間が経つと牡蠣の中でウイルスが増加する可能性があります。

カキフライにしたものでも、できるだけ揚げたてのうちに食べることが大切です。牡蠣鍋も、おしゃべりや牡蠣の譲り合いで時間が経ってしまいやすいので注意してください。

牡蠣で血糖値が下がる!健康や美容に嬉しい効果も満載!

牡蠣を食べることで血糖値が下がったり、免疫力が上がったり、健康にさまざまなメリットがあります。

薄毛や肌トラブルを改善する効果も期待できるため、美容のためにも嬉しい食材です。現代人に不足しがちな「亜鉛」が豊富に含まれる食材なので、旬の季節は積極的に食べてみてください。

ただし、牡蠣にはノロウイルスに感染するリスクがあります。できるだけ新鮮なものを選び、加熱調理したものでも素早く食べて急性胃腸炎になるのを防ぎましょう。

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

関連する記事