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パワハラ防止法とは?パワハラする人の心理と対処法について

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「上司から嫌がらせを受けている」「仕事を押し付けられている」など、職場におけるパワハラに悩んでいませんか?

上司からのパワハラは、指導や注意との判断が難しいもの。「自分が悪いのかも」と1人で悩み、誰にも相談できずに困っている人も多いかもしれません。

そんな問題に対応するためパワハラ防止法が施行され、厚生労働省では各企業に「職場に置けるパワハラ対策」を義務付けています。

目次

パワハラ防止法とは?

パワハラ防止法とは、職場におけるパワハラの基準を法律で定めて防止措置を義務化し、パワハラ対策を強化する目的で交付された法律です。

正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」といい、令和2年6月1日に施行されました。

パワハラと同様に、セクハラなど各種ハラスメントの防止対策も強化されています。

参考:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)ってどんなもの?

パワハラ防止法では、以下の3つを満たすものを「パワハラ」として定めています。

▼パワハラに該当する3つのポイント

・優越的な関係を背景とした言動
・業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
・労働者の働く環境に支障があるほどの、精神的身体的苦痛があるもの

具体的には、以下のようなものがパワハラとして例に挙げられます。

▼パワハラの具体例

・叩いたり、蹴ったり、物を投げつける
・人格を否定するような事を言ったり、長時間叱責したり、人前での厳しい叱責を繰り返す(メールも該当)
・仕事を外したり、隔離したり、集団で無視したりする
・過酷な環境下での労働を長時間行わせる
・必要な教育を行わないまま、到達できないレベルの業績目標を達成させようとする
・業務に関係のない私的な雑用を強制的に行わせる

ただし客観的に見て、業務上必要かつ適正な指示や指導については、パワハラに該当しません。

パワハラ防止のために事業主が行うべき措置・取組

職場におけるパワハラや各種ハラスメントを防止するために、事業主は以下のことを必ず講じなければなりません。

▼事業主が雇用管理上講ずべき措置

・事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
・相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
・併せて講ずべき措置 (プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)

さらに厚生労働省では、パワハラ防止のために「望ましい取組」についても定めており、積極的に対応するように呼びかけています。

▼ハラスメント防止のために望ましい取組

・各種ハラスメントの一元的な相談体制の整備
・職場に置けるハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取組
・労働者や労働組合等の参画

パワハラを起こす人の心理

アブラハム・マズローが考案した「マズローの欲求5段階の説」によると、人間の欲求はピラミッド状に5つの階層になっています。下の欲求が満たされると、上の欲求に向かっていくという心理学の理論です。

▼マズローの欲求5段階の説

・自己実現の欲求:能力や可能性を最大限に発揮したい
・承認欲求:集団から存在価値を認めてもらいたい
・社会的欲求:家族や仲間とともにいたい
・安全の欲求:安全な場所にいたい、健康でいたい、お金が欲しい
・生理的欲求:食べたい、飲みたい、眠りたい

人間の欲求には「尊敬されたい」「正しいと認められたい」「価値があると思われたい」など、人から認められたい承認欲求があります。パワハラが起こる仕組みは、承認欲求によるものといえるでしょう。

承認欲求を満たしたい

そもそも、承認欲求は悪いものではありません。

承認欲求があるからこそ、人間は自分を高めるために努力ができます。承認されることで達成感につながり、さらなるやる気につながるものです。

しかし他者からの承認に執着しすぎると、自分の思い通りに動かない人について「自分をばかにしている」と感じてしまいます。すると不満や怒りが大きくなり、承認欲求を満たすためにパワハラ行為を行ってしまうのです。

パワハラをする人の心理は「自分をばかにすると痛い目に遭わせるぞ」という感じ。現在はテレワークを導入している企業が増えたことで、承認欲求が満たされない上司がストレスを抱えているかもしれません。

和が乱れることを嫌う性質

日本人は「和を重んじる文化」を持っています。

口には出さないけれど「みんなが我慢していること」を誰かが初めにやると、「自分勝手な奴め!」と攻撃の対象になってしまうのです。

男性が育児休暇を取ったときの「パタハラ(パタニティハラスメント)」がそのいい例。日本人特有の和を重んじる文化が、悪い方に影響してしまいます。

「人と違うことをすれば悪評価される」「職場では新しいことをしないほうが安全」という考え方が定着すれば、会社を良くするために行動する気持ちも起こりません。するとパワハラが横行するようになり、会社の成長はストップするでしょう。

パワハラ以外のハラスメントの種類

ハラスメントとは、立場や優位性を利用して嫌がらせする事です。ハラスメントの種類は、50種類以上あるといわれています。

下に挙げたものは、多く存在するハラスメントの中の一部です。

▼ハラスメントの種類

・パワーハラスメント(パワハラ)
・セクシャルハラスメント (セクハラ)
・セカンドハラスメント (セカハラ)
・モラルハラスメント (モラハラ)
・アルコールハラスメント(アルハラ)
・ジェンダーハラスメント (ジェンハラ)
・アカデミックハラスメント (アカハラ)
・リストラハラスメント(リスハラ)
・テクスチュアルハラスメント(テクハラ)
・キャンパスハラスメント (キャンハラ)
・スクールセクシャルハラスメント(スクハラ)
・エレクトロニックハラスメント(エレハラ)
・エイジハラスメント(エイハラ)
・シルバーハラスメント (シルハラ)
・マリッジハラスメント (マリハラ)
・マタニティハラスメント (マタハラ)
・パタニティハラスメント(パタハラ)
・ケアハラ(ケアハラスメント)
・パーソナルハラスメント (パーハラ)
・ラブハラスメント (ラブハラ)
・終わらせハラスメント(オワハラ)
・スモークハラスメント (スモハラ)
・スメルハラスメント (スメハラ)

パワハラをなくすには?

パワハラをなくすために効果的な方法が「セルフ・コンパッション」です。

「コンパッション」とは、日本語でいうと「思いやり」という言葉が最も近いといえます。

▼セルフ・コンパッションのやり方

・自分を認める自分を応援する気持ちを持つ
・自分と他人の共通点に気づく
・自分と他人の相違点を認める

自分に厳しい評価をしている人は、他人にも厳しい評価をしがち。

「自分ができたのに、どうしてあなたはできないの」
「どうしてあなただけが、こんなこともできないの」

相手のためを思って言ったことでも、知らず知らずのうちに相手を傷つけているかもしれません。パワハラしたつもりはないのに、パワハラ加害者になってしまうことも多くあります。

自分にも他人にも厳しくしてしまう人は、まずは自分を認めてあげることで、思いやりの気持ちを高めてみてください。相手の立場になって物事を考えられるようになることで、パワハラはなくなっていくはずです。

パワハラ防止法で快適に過ごせる社会へ

「自分はパワハラなんてしない」と思っている人でも、パワハラを起こさないように心がける必要があります。

なぜならどんなパワハラ加害者でも、本人はパワハラしているつもりがないからです。「その人のためを思って」という気持ちで行ったことでも、相手の受け止め方次第ではパワハラになってしまいます。

パワハラ被害に遭ってしまったときは、人事や労働組合等に相談してみてください。パワハラ防止法に基づく相談窓口がわからないときは、各都道府県の労働局が運営する相談機関に連絡してみてもいいでしょう。

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

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