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どうして人間だけが肥満になるの?超肥満サルから学ぶ食欲の謎

バンコクの市場で飼われていたサルの「ゴジラ」は、3歳9ヶ月で体重20kgを突破。サルの平均体重の2倍以上になってしまったため、ダイエットに励むのだそうです。

「ゴジラ」はお客さんから餌を与えられるうちに太ってしまったそうですが、そもそも、野生のサルが肥満になることはありません。サルだけでなく、野生の動物は適正な体型を保っており、自然界で肥満になることはないですよね。

それに対し、人間の肥満人口は世界的に増え続けています。では、どうしてサルの「ゴジラ」や人間だけが肥満になってしまうのでしょうか?

目次

どうして人間だけが肥満になるのか?

自然界の虫や鳥や動物たちは、必要以上に食べないでいられます。しかし人間は、どうして体を壊してまでも食べ続けてしまうのでしょうか。

人間はお腹が空いていなくても食べる

人間だけが肥満になる理由の1つとして、高度に発達した知能が影響していると考えられます。

「お腹が空いた」以外にも、人間には食べる理由がたくさんあるのです。

▼人間が空腹以外で「食べる」理由

・美味しそうだから
・ストレス解消のため
・みんなが食べているから

人間は味を想像したり、食べることでストレス解消したり、食事に対して高度な能力を備えています。社会的な規範に従うことも、野生の動物にはない思考・行動です。

野生の動物は肥満にならない

サルは人間に近い脳をもつ動物ですが、野生のサルが食べすぎて太ることはありません。野生の鳥たちは木の実や虫を食べ放題ですが、食べすぎることなく飛び回れる身体を維持しています。

野生の牛はいくらでも草を食べられますが、草を食べ尽くしてしまうことはありません。海で暮らす魚たちも、餌が豊富な環境にありながら適度な食事量で暮らしています。

野生の動物は、いくら食べものに溢れている環境でも、食べすぎて肥満になることはないのです。

人間が食べ物を与える動物は肥満になる

野生の動物は肥満になりませんが、人間が食べ物を与えている動物は肥満になります。

サルの「ゴジラ」は、人間に与えられた餌を食べすぎて肥満になりました。

犬や猫も野生ならスリムな身体を保っていますが、人間に飼われて餌を食べすぎると肥満になります。

このことから、肥満の原因は「人間の高度な知能」だけでなく、人間が与える「食べ物自体」にも原因があると考えられるのです。

人間の食欲を操っているのは「超加工品」

人間や動物の食欲を操っていたのは、人間が作り出した「超加工品」であることが分かりました。

人間が作る「超加工品」が食欲を加速させる

人間が作り出す「超加工品」を食べることで、人間も動物も、食欲に歯止めが効かなくなってしまいます。

野生の動物は肥満にならないのに、人間から餌を与えられた動物が肥満になるのは「超加工品」の摂取が影響していると考えられるでしょう。

▼超加工品に分類されるもの

・炭酸飲料
・スナック菓子
・アイスクリーム
・チョコレート
・キャンディー
・大量生産されたパン
・マーガリン
・ケーキ
・加工調理済みのパイ
・加工調理済みのパスタやピザ
・加工肉(ソーセージ、ベーコン等)
・ハンバーガー
・インスタントスープ
・麺類
・その他

「超加工品」とは、ブラジル・サンパウロ大学公衆衛生学部が考案した「NOVA」に基づく食品部類です。

酸化防止剤や安定剤、保存料を始め、一般的な料理に使用されない物質が含まれているもののことを「超加工品」といいます。自然食品を模倣した「着色料」「香料」や、食品から直接抽出した「グルテン」「カゼイン」などが含まれているものも「超加工品」です。

「超加工品」は嗜好性が高く、洗練された魅力的なパッケージで販売されています。子供や青年に向けたマーケティングに力を入れており、高い収益性を備えているのが特徴です。

「超加工食品」を完全に避けるのは難しい

世の中には「超加工品」に溢れており、一切摂らずに行きていくことは非常に困難な時代です。

スーパーやコンビニを利用していれば、無意識に超加工品を食べてしまいます。付き合いで飲み会に行けば、メニューのほとんどが超加工品です。

完全に自給自足の生活をすれば可能かもしれませんが、現実的ではありません。一部の人が自給自足生活を頑張ったとしても、世界の肥満人口を減らすのは難しいといえるでしょう。

食欲を抑えて肥満を防ぐ方法

「超加工品」に溢れた時代でも、私たちが食欲を抑え肥満を予防する方法はあります。それは「食べるものの種類」「食べ方」を変えることです。

積極的に「食物繊維」を食べる

「食物繊維」は、人間の肥満に歯止めをかける食品成分です。

玄米、豆類、野菜、海藻、きのこ類、イモ類などに含まれ、誰もが1日あたり20〜25gほど摂取するべきとされています。

▼食物繊維の健康効果

・便秘の予防
・整腸効果
・血糖値上昇の抑制
・コレステロール濃度の低下
・肥満の予防
・糖尿病症状の改善
・血圧上昇の抑制

食物繊維は小腸で消化・吸収されず、大腸まで達して腸の調子を整えます。その他血糖値の上昇やコレステロールの低下などの生理機能が明らかになっており、肥満予防に効果が期待できます。

現在では、多くの日本人が食物繊維不足に陥りがちです。肥満を予防するためにも、積極的に食物繊維を食べることをおすすめします。

マインドフルイーティングで「気づく力」を養う

食欲抑制や肥満予防に効果的な食べ方が「マインドフルイーティング」です。

マインドフルイーティングとは、食べ物の味や匂い、食感などを感じながらゆっくりと食事すること。マインドフルイーティングを行うことで、食自然と食欲をコントロール出来るようになります。

また、マインドフルイーティングで「気づく力」を養うことも大切です。

▼マインドフルイーティングによる気付き

・無意識に食べていることに気づく
・空腹でもないのに食べている自分に気づく
・それを食べることが、将来の幸せと健康より魅力的と感じている自分に気づく
・食材の味わいや香りに気づく

気づく力を高めることで、動物としての食べる調節能力が取り戻せるはず。難しいテクニックはいらないので、今日からマインドフルイーティングを取り入れてみてください。

「超加工品」が食欲を操り肥満にさせる

人間や人間が餌を与えた動物が肥満になるのは、人間が作り出す「超加工品」の影響です。

自然なものだけを食べている野生動物は、食欲をコントロールできるので肥満になりません。しかし「超加工品」を食べる人間や動物は、食欲に歯止めが効かなくなるので肥満になってしまいます。

現代は世界中に「超加工品」が溢れているため、普通の生活をしている以上完全に避けるのは困難です。できるだけ自然な食品を選ぶことを心がけつつ、マインドフルイーティングで「気づく力」を養い、食欲をコントロールする力を取り戻しましょう。

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

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