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私たちはプラスチックを食べている?プラスチックの人体への影響とは

ビニール袋の有料化やプラスチックストロー、フォークの廃止など……日本政府によるプラスチック削減への取り組みが注目されています。

では、どうして便利なプラスチックを削減する必要があるか分かりますか?実は、プラスチックを使い続けることで地球環境が悪化するだけでなく、私たち人体への影響も懸念されているのです。

当記事では、医師がプラスチックによる人体への影響について解説します。「プラスチックを削減してどうなるの?」「意味があるの?」と感じている人は、ぜひ最後まご御覧ください。

目次

プラスチックの有害物質による人体への影響

ニューカッスル大学の報告によると、世界中の人々は「飲食」「呼吸」によって1週間あたり5000mgものプラスチックを身体に取り込んでいるそうです。

プラスチックには、有害な添加物が7%程度使われているといわれています。細かくなって海を漂う過程で有害物質を吸着し、さらに毒性を高めていくのです。

プラスチックの人体への影響を示す研究データは、あまり多くありません。しかし、数々の動物実験においてプラスチックの有害性が示されています

肝腫瘍や精巣萎縮

プラスチックに柔軟性を持たせるために配合される「フタル酸」は、マウスなどの実験によって肝腫瘍や精巣萎縮に影響することが報告されています。

「フタル酸」が使われるのは、レインコートや床材などです。日本では、子供用のおもちゃには「フタル酸」が含まれるプラスチックの使用を禁止していますが、大人が使う多くのものには含まれます。

発がん性や生殖機能障害

柔らかいポリ塩化ビニルに含まれる「ビスフェノールA(BPA)」は、動物実験で発がん性や生殖機能障害などが報告されています。

欧州では、子どもが口にする可能性のあるおもちゃや哺乳瓶などへの使用が厳しく規制されています。しかし日本では、食品用の容器等の原料として未だ使われているのが現状です。

甲状腺撹乱作用や神経毒性

プラスチックを燃えにくくする「ポリ臭化ジフェニルエーテル」には、甲状腺撹乱作用や神経性毒などが報告されています。

コンピューターやテレビなどの電子機器、カーテンや家具などの室内装飾剤、自動車の内装材などで幅広く使用されてきた素材です。現在はストックホルム条約や欧州の規制によって生産量は減少していますが、既に製品として出回っている製品のリサイクルについては提供除外となっています。

人間がプラスチックを取り込んでしまう原因

私たちは、どのようにして体内にプラスチックを取り込んでしまうのでしょうか。現代の生活を続ける限り、プラスチックの摂取を避けるのは難しいかもしれません。

プラスチックを食べた魚から鳥や人間へ連鎖

世界の海には、年間800万tのプラスチックが捨てられます。

海に捨てられたプラスチックが細分化し、それを魚介類が食べると、有毒な成分が臓器に蓄積します。そして、濃縮した毒を有する魚が人間の食卓に上がるのです。

プラスチック容器を電子レンジで加熱

プラスチックの有害物質は、熱によって溶け出すことが分かっています。

お弁当やお惣菜を電子レンジで加熱したとき、プラスチックの有害物質が溶け出す可能性があるということです。熱だけでなく、油や劣化によっても有害物質が溶け出しやすくなることが分かっています。

さらにプラスチックが劣化して傷ついたり、細かくなったりすることで有害物質が溶け出すこともあります。食品トレイは食べるものに直接触れるので、扱いには注意が必要といえそうです。

科学合成繊維やプラスチック用品から流出

私たちが普段着用している化学合成繊維の服を洗濯すると、排水にプラスチックの有害物質が流れ出します。

その他、食品トレイやスポンジ、ティーバッグなどさまざまなプラスチック用品から有害物質が流出しているのです。5mm以下のプラスチックは、マイクロプラスチックと呼ばれています。

プラスチックは食べ物だけでなく、世界中の水道水からも検出されているそうです。プラスチックを使い続ける生活を続ける限り、有害物質を避けるのは難しいのかもしれません。

海鳥も魚からプラスチックを食べている

魚を食べる世界中の海鳥のうち、約40%からプラスチック添加剤が検出されています。

また、プラスチックが多く検出された鳥は「中性脂肪」「コレステロール」「尿酸値」が高かったそうです。プラスチック材を身体に取り込むことで、肥満になりやすくなることが示されています。

さらに、プラスチック材が検出された海鳥はカルシウム濃度の低下も見られました。免疫機能やアレルギー性疾患など、さまざまな疾患を引き起こす可能性があることも報告されています。

プラスチックの有毒性は人体に影響する!プラスチック削減に取り組もう

プラスチックを避けられないような環境を作り出したのは、ごく最近の私たち人間の行動によるもの。

プラスチックは便利で扱いやすいなど利点もありますが、環境汚染や動物の身体への蓄積、そして人間への健康被害につながります。地球環境のことを考えると、プラスチックの使用量を減らすことが重要課題です。

プラスチック削減への取り組みは、今の私たちと子孫の幸福をもたらします。自分への思いやりをもち、よい先祖となっていくために、プラスチック削減を積極的に行いましょう。

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

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