「https://mindful-health.co.jp/info/wp-content/uploads/2022/08/maxim-ilyahov-bLF4R69LTGw-unsplash.jpg」のアイキャッチ画像 睡眠不足による脳への影響とは?睡眠不足と徹夜はどちらが脳に悪い?

睡眠不足による脳への影響とは?睡眠不足と徹夜はどちらが脳に悪い?

社会環境の変化や激務、ストレスなど……さまざまな影響で、睡眠の問題を感じているのではないでしょうか?

実は、慢性的な睡眠不足は徹夜と同じくらいダメージがあります。日中になんだかぼーっとする方や、ストレスを感じやすい方は、睡眠不足による脳機能の低下が起きているかもしれません。

今回の記事では、医師が「睡眠不足による脳への影響」について解説します。

目次

睡眠不足と徹夜は同じくらい脳に悪影響

慢性的に睡眠不足の人は、徹夜明けのときと同じくらい脳の働きが低下します。

徹夜したときは頭がぼーっとして、集中できないと実感したことがある方も多いのではないでしょうか?実は、「4時間睡眠で6日間過ごす」と徹夜と同じくらい脳の働きが低下してしまいます。

「4時間睡眠で11時間過ごす」と脳は2日連続で徹夜したときと同じ状態です。脳機能が低下し、作業のパフォーマンス低下やミスの増加が起こりやすくなります。

当直明けの医師はPCの作業効率が14%低下、クリックのミスは20%増加したそうです。2日連続で徹夜することを考えると、パフォーマンス低下やミスは著しく低下することが考えられます。

睡眠不足は飲酒状態よりも危険運転が増える

睡眠不足のときは、飲酒状態のときよりも危険運転をしてしまうリスクが高くなります

7時間未満の睡眠が慢性的に続いている人は「マイクロスリープ」という状態が起こりやすくなるのです。これは、目が閉じるか閉じないかの状態が数秒間起こること。

運転中に「マイクロスリープ」が起こると、死亡事故につながるかもしれません。

睡眠不足は幸福度を下げる

睡眠不足の状態が続くと、脳の扁桃体という部分が過剰反応するようになります

扁桃体とは、ネガティブな感情を増幅させる場所です。キレやすい状態のときは、この扁桃体が暴走していることが考えられます。

睡眠不足が続くとキレやすくなったり、落ち込みやすくなったりして、人間関係の悪化にもつながるでしょう。このことから、睡眠不足は幸福度まで下げてしまうのです。

睡眠不足を改善する3つの具体的な方法

「なかなか寝付けない」「寝ても目覚めてしまう」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?

しかし仕事が忙しかったり、悩みがあったりして、睡眠時間を確保できない方も多いかもしれません。

ここでは、睡眠不足を改善するための方法を3つ紹介します。どうしても睡眠不足を改善できない場合は、専門的な医療機関で治療することも視野にいれましょう。

生活習慣を改善する

軽度の睡眠障害の場合は、生活習慣を改善することで眠りやすくなります。

▼睡眠改善のための生活習慣

・朝日を浴びる
・朝食を食べる
・日中はしっかり活動する
・適度な運動習慣を取り入れる
・就寝1〜2時間前に入浴する
・夜の明るい光は避ける
・就寝直前の食事は避ける
・カフェインやニコチン、アルコールを避ける

朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に睡眠ホルモン「メラトニン」が分泌されやすくなります。朝食は末梢の体内時計をリセットする効果もあるので、睡眠改善のためにも有効です。

入浴は就寝1〜2時間前に、38度くらいのぬるま湯に浸かるのが効果的。寝る前はPCやスマホのブルーライトを避け、部屋は真っ暗にしてから寝るようにしてください。

日中にどうしても眠くなってしまったときは、15分程度の昼寝をすることで眠気を解消できます。高齢者の場合は、30分程度の昼寝をすることで夜によく眠れるようになるでしょう。

周りの人に相談する

睡眠を削り続けている原因が仕事なら、職場の上司や産業医に相談してみてください。

しっかりと眠ることで生産性が高まり、笑顔が多い職場になっていきます。環境改善の余地がないか検討してもらい、できるだけ眠れるような環境を作ることが大切です。

一緒に寝ている家族のいびきや寝相、エアコンの温度設定が気になって眠れない場合は、寝室を別々にすることも検討しましょう。寝室を同じにすることで生まれるコミュニケーションもありますが、家庭の幸福度アップのためには睡眠の質を上げることが必要不可欠です。

簡単には変えられないことが多くありますが、まずは声を上げることが解決への第一歩。変えられると信じ、勇気を出して行動してみることで状況は少しずつ変わっていくはずです。

専門医に相談する

どうしても眠れない場合は、睡眠の専門医に相談してみてください。

入眠障害や中途覚醒、早朝覚醒など……眠れない問題が1ヶ月以上続いている場合は、不眠症の可能性があります。日中の倦怠感や意欲低下、集中力や食欲低下などの不調が出現する場合は、きちんと治療することが大切です。

不眠症になる原因は生活習慣の乱れや環境だけでなく、心や身体の病気が隠れていることもあります。睡眠不足を甘く見ていると、別の病気が進行してしまうかもしれません

「睡眠薬は依存性があるのでは?」「手放せなくなるのでは?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか?しかし現在使われている治療薬の多くは、医師の指示に従って適切に使用すれば安全なものばかりです。

市販の睡眠薬も売られていますが、これは短期間の使用に限られており、不眠症の治療効果は認められていません。どうしても眠れなくて困っているなら、できるだけ早めに医療機関を受診するようにしてください。

睡眠不足を解消して脳をすっきりさせよう

働き方改革で残業への規制は厳しくなりました。

しかし、産業医として現場を見る限り、現状はほとんど変わっていません。生産量が増えると残業が増え、それに伴って睡眠も削られる傾向にあります。

テレワークで仕事場が自宅になった人は、通勤がない分、いつまでも仕事をしてしまうということもあるでしょう。

睡眠不足になると仕事のパフォーマンスは低下し、生産効率は悪くなります。「みんな頑張っているから」「少しは無理できるから」と我慢せず、勇気を出して声を上げてみることも大切です。

良質な睡眠が脳機能を活性化させ、幸福度を上げてくれます。眠れなくて困っている人は生活習慣を整え、それでも改善しないときは医療機関に相談しましょう。

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

関連する記事