脂肪肝の新しい基準「MAFLD」とは?コロナ禍で増えるメタボ問題
コロナ禍における自粛生活が続く中で、体重の増加(体型の変化)を感じている方も多いのではないでしょうか?
そんな中、コロナ禍で増加しているのが「脂肪肝」です。
「私はお酒を飲まないから関係ない」と思っている方もいるかもしれません。しかし「脂肪肝」は、飲酒習慣の有無に関わらず起こる可能性があるのです。
今回の記事では、脂肪肝の新しい基準「MAFLD(マッフルディ)」について解説します。コロナ禍で「太ったかも……」と自覚のある方は、ぜひ参考にされてみてください。
目次
そもそも脂肪肝ってどんなもの?
「脂肪肝」とは、肝臓に中性脂肪が多くたまった状態のこと。
食べ過ぎ、飲みすぎ、運動不足などが「脂肪肝」の原因です。肥満や糖尿病があると、脂肪肝はさらに悪化しやすくなります。
脂肪肝を放置していると動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中になりやすいので注意が必要です。さらに悪化すると、肝硬変や肝がんへと進行して死亡リスクが高まります。
アルコール性脂肪肝(AFL)
「脂肪肝」といって多くの方がイメージされるのは、アルコール性脂肪肝(AFL:alcoholic fatty liver)ではないでしょうか。
アルコール性脂肪肝は、毎日たくさんのアルコールを摂取する方が発症する脂肪肝です。アルコール性肝炎に進行すると、食欲不振やだるさ、発熱、腹部右上の腫れや黄疸などの症状が見られます。
男性よりも女性の方が少ない飲酒量で発症しやすいと考えられているため、女性の飲酒は特に注意が必要です。アルコール性脂肪肝(肝炎)にはアルコール依存症を背景に持つ方が多く、アルコール依存症の専門治療が必要な場合もあります。
非アルコール性脂肪肝(NAFL=ナッフル)
お酒をあまり飲まない方が発症する脂肪肝を「非アルコール性脂肪肝(NAFL:nonalcoholic fatty liver)」といいます。
▼非アルコール性脂肪肝の疾患定義 ①脂肪肝がある ②アルコール接種歴がない ③他の肝疾患原因がない |
②のアルコール接種歴の基準は、エタノール換算で男性が30g以下、女性が20g以下です。
「非アルコール性脂肪肝」の原因の多くは、食べ過ぎや飲みすぎによるものだと考えられています。また、糖尿病や薬剤性、栄養障害による代謝異常によって起こることもあるようです。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)
非アルコール性脂肪肝による炎症を繰り返し、肝臓が線維化して固くなると「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis)」に進行します。
「非アルコール性脂肪肝炎」は主に肥満や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を伴って発症する肝炎です。
「非アルコール性脂肪肝炎」を発症した人の1〜2割は、肝硬変に進行するといわれています。肝硬変になると年率数%で肝がんを発生して死亡リスクにつながるため、とても深刻な状態といえるでしょう。
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD=ナッフルディ)
非アルコール性脂肪肝から肝炎、肝硬変へ進行してしまう一連の病態を「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease)」といいます。
脂肪肝の新基準「MAFLD(マッフルディ)」とは?
脂肪肝は、全身の病気につながる症状です。
そんな脂肪肝を早期発見して治療するため、2020年に脂肪肝の新しい基準として「代謝異常関連脂肪肝(MAFLD:metabolic dysfunction-associated fatty liver disease)」が提唱されました。
「MAFLD」とは代謝異常関連脂肪肝のこと
「MAFLD」とは、脂肪肝と代謝異常を合わせた「代謝異常関連脂肪肝」という症状のことです。
「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」との違いは、メタボリックな因子を伴うすべての脂肪肝を拾い上げていることです。飲酒量によって規定されていた「NAFLD」とは異なり、肥満や糖尿病などの代謝異常も組み入れて基準にしています。
「MAFLD」に該当するのはこんな人
脂肪肝と診断された方で、以下のような症状がある場合は「MAFLD」に該当すると考えられます。
▼代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)に該当する人 ・肥満(BMI23以上) ・2型糖尿病 ・中性脂肪が高い ・高血圧 |
肥満や糖尿病ではなくとも、中性脂肪や血圧が高いと指摘されている場合は「MAFLD」に該当します。
さらにBMI23未満の方でも、健康診断で以下の項目に高い数値が出た場合は「MAFLD」といえる状態です。
▼BMI23未満のMAFLD ・ウエスト径 ・血圧 ・中性脂肪 ・HDLコレステロール ・前糖尿 ・HOMA-IR ・HsCRP 上記の高い数値が2個以上該当する場合 |
「MAFLD」の判断について、飲酒量の有無については特に規定されていません。ただし毎日飲酒する方の場合、1日あたり60g未満のアルコール摂取で「MAFLD」リスクを高めることが分かっています。
「MAFLD」の発症に関連する生活習慣
大阪市立大学医学部の研究によると、夜食・飲酒・欠食(1日2食)が「MAFLD」の発症に関連する可能性があると示されました。
コロナ禍で通勤がなくなり、夜食や飲酒が増えた方も多いのではないでしょうか?また、時間的な縛りがなくなったことで朝食や昼食を抜いてしまうこともあるかもしれません。
そんなちょっとした毎日の積み重ねが脂肪肝に繋がり、肝炎や肝硬変に進行する原因になります。肝がんを発症して死亡してしまう可能性もあるので、コロナ禍でも生活習慣や食事には気をつけたいところです。
「MAFLD」を予防・改善するためには?
健康診断で脂肪肝と診断されても、諦めて放置している方が多いようです。
しかし生活習慣を改善すれば、肝臓の状態はよくなっていきます。食事内容や飲酒、運動など……無理なくできることから少しずつ取り入れて、健康的な身体になるための取り組みを習慣化していきましょう。
何気ない習慣を変えるためには、1人ひとりに合った方法を選択する必要があります。習慣化するためのコツをお伝えする「Dr.あきこ 健康コンサルティング」も受け付けておりますので、ぜひご自身の健康のためにご参加ください。
飲酒しなくても脂肪肝になる!コロナ禍で太った方は要注意
飲酒習慣がない方でも、肥満や糖尿病などの代謝異常がある場合は脂肪肝による肝炎や肝硬変のリスクが高まります。
まだ肥満や糖尿病と診断される前でも、中性脂肪や血圧の数値が高く出ている方は要注意。BMIが低い方でも、内臓脂肪型のメタボリックシンドロームを指摘されている場合は脂肪肝の進行リスクが高いので油断できません。
健康診断などで脂肪肝と指摘されても、生活習慣を改めることで肝臓の状態は少しずつ改善していくはずです。まずは無理なくできることから健康への取り組みを始めて、少しずつ元気な身体を取り戻していきましょう。