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グルテンフリーとは?小麦を食べると体調が悪くなるって本当?

「グルテンフリーって聞くけど、正直よく分からない」「パンや麺類が好きだけど、健康に悪いの?」など、グルテンフリーについて疑問に感じている方が多いのではないでしょうか?

健康志向が高まる中で、グルテンフリーを取り入れる人が増えるようになりました。しかし実際には、グルテンについて詳しく知っている方は少ないのが現状です。

そこで今回は、医師が「グルテンフリーとは?」という内容で解説します。慢性的な不調や肥満、肌トラブルなどに悩んでいる方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。

目次

そもそも「グルテン」とは?

食べ物のパッケージに「グルテンフリー」という表示があるものを見かけるようになりました。

また、お店によっては「グルテンフリー」のコーナーが設置されているところもあります。都心では「グルテンフリー専門店」も増えてきているようです。

しかし、日本ではまだ「グルテン」に関する情報は多くありません。「グルテンってどんなもの?」「何が健康に悪いの?」と思っている方も多いのではないでしょうか?

「グルテン」とは粘り気を出すタンパク質

「グルテン」とは、小麦や大麦などに含まれるタンパク質のことです。

「グルテン」には粘り気や、もちもちとした食感を出す性質があります。うどんにコシがあっておいしいのも、グルテンのおかげです。

グルテンの成分は粘性を持つ「グリアジン」と、弾性を持つ「グルテニン」で構成されています。「グリアジン」「グルテニン」の成分がどちらも基準値以下のものは、パッケージに「グルテンフリー」と表示可能です。

小麦粉のグルテン含有量は薄力粉<中力粉<強力粉

小麦粉の中でも、種類によってグルテンを含む量が変わります。

グルテン含有量は薄力粉<中力粉<強力粉です。

▼小麦粉の種類

・強力粉:パスタ、パン、餃子の皮、ナン、中華麺など
・中力粉:そうめん、うどん、お好み焼き、たこ焼き、中華まんなど
・薄力粉:クッキー、ケーキ、饅頭など

小麦粉を原料とした食べ物でも、薄力粉を使ったクッキーより、強力粉を使ったパスタやパンのほうがグルテン含有量が多いということになります。

小麦粉にグルテンが多く含まれる理由

小麦にグルテンが多く含まれるのは、遺伝子操作による品種改良の影響だといわれています。

アメリカでは1940〜1960年代にかけて「緑の革命」という農業革命が起こりました。このとき小麦の遺伝子操作によって品種改良を行い、穀物の大量増産を達成したのです。

背が低い小麦を作ることで、雨や風でも倒れにくくなりました。さらに茎が短い分「穂」に栄養が集まるため、収穫高の高い小麦が出来上がったのです。

この品種改良によって、小麦に「グルテン」が過剰に含まれるようになったといわれています。

小麦粉の品種改良によって炭水化物の質も変化した

小麦粉の品種改良によって増えたのは、グルテンだけではありません。

「緑の革命」における小麦の遺伝子操作によって、アミロペクチンAという成分も増加しました。アミロペクチンAとは、他の糖質よりも消化・吸収が早い炭水化物です。

アミロペクチンAを摂ると血糖値の乱高下が起こり、活性酸素が過剰に産生されやすくなります。すると体中で炎症が起こり、さまざまな不調につながるのです。

グルテンによる身体への影響

世界中の健康志向の人々が「グルテンフリー」を取り入れています。では、そもそも「グルテン」を摂ると身体にどのようなことが起こるのでしょうか?

グルテンには依存性がある

グルテンが体内に入ると、麻薬のような物質「エクソルフィン」に分解されます

「エクソルフィン」が体内で吸収されると、麻薬の受容体である「オピオイド受容体」にくっつくのです。すると多幸感を感じるようになり、小麦に依存性が生じ始めます

焼き立てのパンやお好み焼き、ラーメン、カレー、ピザ、うどんなど……多くの人から愛されているメニューに共通するのは「グルテン」です。一度食べたらまた食べたくなるのは、グルテンの依存性も関係していると考えられます。

グルテンは体内で毒性を持つ物質に変化する

グルテンが体内に入ると、ポリペプチドに分解されます。

ポリペプチドとは、多数のアミノ酸が結合したタンパク質のことです。グルテンポリペプチドはさまざまな毒性を発揮し、体内で炎症を引き起こすことが分かっています。

▼グルテンポリペプチドの作用

・抗グルテン抗体の抗原になる
・免疫機能に変化を与える
・細胞毒性を発揮する
・腸内細菌が産生する毒素を血中に入れる
・セリアック病の炎症を引き起こす

グルテン不耐性の体質の人は不調が起こる

グルテン不耐性とは、グルテンを摂ると不調が起こる体質のこと

グルテン不耐性の人は「抗グルテン抗体」が体内にあるので、グルテンを摂るとさまざまな不調が起こります。

▼グルテン不耐性によって起こる症状

・下痢
・体重減少
・貧血
・全身倦怠感
・抑うつ
・イライラ
・集中力の低下
・不眠
・めまい
・肌トラブル
・関節痛

グルテン不耐性かどうかは、食物アレルギー検査で分かります。小麦を食べると不調が起こると感じる方は、医療機関で食物アレルギー検査を試してみてください。

グルテンフリーとは?

グルテンフリーとは、グルテンが全く含まれないというわけではありません。

グルテンの含有量が基準値以下のものを、グルテンフリーと表示していいことになっています。

グルテンフリーの表示は国によって異なりますが、各国で共通する表示基準は「小麦等1kgあたりのグルテン含有量が20mg以下または未満」です。つまり、グルテン含有量が20ppm(0.002%)以下または未満と決められています。

グルテンフリーはセリアック病患者の食事療法として考案された

グルテンフリーは、もともとセリアック病の治療のために考案された食事療法です。

セリアック病とは、「グルテン」に異常反応を示す遺伝子の自己免疫疾患です。

「グルテン」を摂ると自己免疫が小腸の組織を攻撃して炎症が起こり、細胞を破壊します。その結果、栄養素の吸収低下や腹痛、下痢、倦怠感などさまざまな症状が出るのです。

そのため、「セリアック病」の患者はグルテンフリーの食事にすることで症状が起こりにくくなります。

グルテンフリーの食事が広がったきっかけ

グルテンフリーの食事が広がったのは、世界的に有名なテニス選手が出版した書籍がきっかけだと考えられています。

ノバク・ジョコビッチ選手は、医師から「小麦が体質に合わない」と診断されました。そこでグルテンフリーの食事を摂り入れたところ、体調が改善して、テニスの成績も上がったそうです。

そのことを書籍で語ると世界的にグルテンフリーの認知度が高まり、日本でも広く知られるようになります。さらにグルテンフリーで体質改善した人がSNSなどで拡散したことで、健康志向の方から注目されるようになったと考えられます。

グルテンフリーの食事をするとどうなる?

グルテンフリーの食事を取り入れると、体調にさまざまなメリットがあるといわれています。

▼グルテンフリーのメリット

・腸内環境の改善
・肌トラブル改善
・倦怠感などの改善
・慢性的な体調不良の改善

グルテンフリーにすると腸内環境が整い、便秘や下痢が改善しやすくなります。それによって肌荒れやニキビなどの肌トラブルが改善し、美容にも効果が期待できるでしょう。

また、倦怠感や慢性的な体調不良の改善も期待されています。グルテンフリーは健康意識の高い人や、常にベストパフォーマンスを求めるアスリートに多く取り入れられているようです。

日本人と小麦の関係

日本人の主食といえば、昔から「米」でした。

昭和に入ってから終戦まで、1人あたりの「米」の年間消費量は120〜170kgだったそうです。これは、現代の2〜3倍ほどの米を摂取していることになります。

第二次世界大戦後に小麦の輸入量が高まった

第二次世界大戦後、日本では小麦の輸入量が飛躍的に高まりました

戦後の日本で小麦の消費量が増えたのは、アメリカの食糧が余っていたからです。アメリカは小麦が大豊作になり、朝鮮戦争のために準備していた食糧が大量に余っていました。

小麦は米に比べて消費期限が短いため、余った小麦を日本が買い取るように取り決めが交わされたのです。そして日本人の食卓には、米ではなく小麦が上がるようになりました。

学校給食から「パン食」が広がった

戦後の日本政府は、栄養改善として学校給食にパン食を取り入れました

そうして日本人に、多くの小麦製品を慣れさせていったのです。

戦後、なんでも欧米化していった日本の風潮を考えると、学校給食に関係なくパン食は広がっていったかもしれません。しかし全体的に考えると、私たちの食生活は政治的な関わりが密接であると考えられます。

日本人はもともと、グルテンフリーの食生活をしていました。日本伝統の和食が復活すれば、私たちは自然とグルテンフリーの健康的な食生活に戻れるはずです。

グルテンフリーの食生活を取り入れてみよう!

グルテンフリーの食事を始めたところ、長年悩まされていた不調が改善したという例が多数報告されています。

下痢や頭痛、関節痛など……慢性的な不調がある方は、グルテンフリーの生活を試してみるとよいでしょう。諦めていた不調の改善や集中力アップ、メンタルの安定など嬉しい変化が感じられるかもしれません。

毎日パンや麺類が食べたくなってしまう場合は、グルテン依存の可能性もあります。食べる量が多いほどグルテン不耐性になるリスクが高まるので、小麦製品ばかり食べすぎないように注意してください。

小麦が悪いというわけではありません。多種類の食材をバランスよく食べることが健康維持につながるので、ぜひこの機会に「グルテンフリー」を意識した食生活も取り入れてみてください!

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

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