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肥満の人は熱中症になりやすい!熱中症の原因と対処法を医師が解説

猛暑が続く夏、特に気をつけなければならないのが「熱中症」です。

「熱中症」によって死亡することもあるため、季節性の病気として甘く見てはいけません。特に肥満体型の人は、熱中症になるリスクが高いので注意が必要です。

この記事では、医師が「熱中症の原因」「肥満が熱中症になりやすい理由」について解説します。対処法についてもお伝えするので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

目次

熱中症の原因は「脱水」

熱中症になる主な原因は「脱水」です。

気温が高い環境の中で大量に発汗すると、身体の中から水分とナトリウムが大量に出ていきます。すると体内のミネラルバランスが大きく崩れ、熱中症になってしまうのです。

汗をかく前から水分摂取量が少ないと、熱中症になるリスクを高めてしまいます。水分摂取はいつでも重要なことですが、夏はとくに意識してお水を飲むようにしてください。

肥満の人が熱中症になりやすい理由5選

肥満の人は、熱中症になりやすいことが分かっています。

なぜなら肥満の人は脂肪量が多く、体内の水分の割合が少なくなってしまうからです。

脳や内臓、筋肉などの組織は約80%が水分で作られています。しかし、皮下にある中性脂肪の水分は約33%しかありません。

皮下脂肪が増えれば増えるほど、体内における水分の割合が低くなってしまうのです。つまり、肥満の人は水分の割合が少ないので、ちょっとしたことで脱水になりやすい体質といえるでしょう。

さらに、肥満の人が熱中症になりやすい要因は多くあります。1つずつチェックして、熱中症を防ぐために夏の過ごし方を工夫してみてください。

理由1:大量発汗による脱水

肥満の人は、体温が上昇しやすく発汗量が多いことが研究で明らかになっています。

なぜなら肥満の人は皮下脂肪が多く、身体にこもった熱を発散しにくいからです。すると、身体は熱を逃がすために発汗を起こします。

汗をかくと、表面の水分が蒸発するときに熱が発散されるのです。そのため、皮下脂肪が多い人ほど発汗が増えると考えられています。

理由2:高血糖による脱水

血糖値が高いと、熱中症になりやすいことが分かっています。

肥満の人は高血糖の傾向が強いので、特に注意が必要です。

血液中のブドウ糖濃度が高くなると、それを薄めるために血管の外側から水分を取り込みます。すると血管内の水分が増加し、浸透圧利尿が生じて尿量が増えすぎてしまうのです。

尿量が増えすぎると脱水になりやすく、熱中症のリスクが高まります。

さらに、高血糖の状態が続いている人は「神経障害」「皮膚の血管障害」が起こりやすくなります。すると熱中症になっても、症状に気づきにくい場合があるようです。

夏は、糖質の摂取量が増えやすい傾向にあります。甘いジュースやビール、アイスクリームやそうめんなど……何気なく口にするものが糖質である場合は、熱中症のリスクを高める可能性があるので注意してください。

また、お盆や夏休みの連休では、ついつい食べる時間が長くなってしまいます。ダラダラ食べ続けるのも高血糖の状態が続きやすいので、お休み中も健康的な食事を心がけるとよいでしょう。

理由3:飲酒による脱水

アルコールには利尿作用があり、飲んだ以上に尿として水分が出ていきます

さらに、アルコールの分解のためにも水が必要です。

アルコールの代謝産物である「アセトアルデヒド」は、体内で酢酸に分解され、さらに二酸化炭素と水になって尿・汗・呼気等から排出されます。その分解を促す酵素の働きに、体内の水が使われるのです。

お酒を飲んだ翌朝、なんだか「喉が渇いた」と感じて起きることはありませんか?お酒を飲んで寝ると、翌朝は軽い脱水状態になっていることが多くあります。

炎天下で長時間過ごす予定がある日の前日は、飲酒を控えたほうがよいでしょう。

特にビールは、1リットル飲むと1.1リットルの水を失うといわれています。夏の炎天下でのビールは、発汗も伴ってより一層脱水が起こりやすいので注意が必要です。

理由4:朝食抜きによる脱水とミネラル不足

肥満の人は、朝食を抜くことが多い傾向にあるようです。

朝食を抜くと、脱水とミネラル不足による熱中症が起こりやすくなります。

1日に摂取する水分量は約2100mlといわれており、その内訳は飲水から1000ml、食事からが1100mlです。つまり、ごくごくと飲むお水よりも食事から取り入れる水分の割合が多いことがわかります。

もし朝・昼・晩の3回均等に食事をするとしたら、1回あたりの食事から摂れる水分は約330mlです。朝食を抜くとしたら330mlの水分が不足するので、その分多く水を飲む必要があると考えられるでしょう。

だからといって、ただ水分摂取量を増やせばいいというわけではありません。

飲み物として摂る水分は、胃から小腸へ一気に流れ込みます。水分が一気に流れ込むと吸収が間に合わないため、余った水分は尿として排泄されてしまうのです。

しかし食べ物として摂る水分は、食物繊維とともにゆっくり腸を移動していくので、体内に長くとどまり脱水を防いでくれます。さらに食材には「ビタミン」「ミネラル」などの栄養を含むため、発汗によるミネラル不足も予防できます。

朝食は、日本の伝統的な「ご飯・味噌汁・漬物・魚」などでたっぷり栄養を摂るのがおすすめ。コンビニの菓子パンやおにぎりで済ませると高血糖やミネラル不足に陥りやすいので、できるだけ和食を中心とした朝食を心がけてみてください。

理由5:睡眠不足による体温上昇

睡眠不足や不眠は、肥満の原因になることが分かっています。

また、肥満の人は喉の空気の通り道が詰まりやすく「睡眠時無呼吸症候群」を発症しやすい傾向にあるようです。

睡眠が不足すると、翌日の深部体温が上昇することが分かっています。このことから睡眠不足だと体温の下がりが悪く、熱中症になりやすいと考えられるでしょう。

水と塩だけではNG!生活習慣を整えて熱中症を防ごう

猛暑の夏に熱中症を予防するためには、普段の生活から整えておくことが大切です。

水と塩だけ準備すればいいと安易に考えず、食事内容や嗜好品の内容・頻度を見直してみてください。

連休中の暴飲暴食や、生活習慣の乱れが起こりやすい時期は特に要注意です。水分摂取や食事内容、室温管理も徹底して、熱中症を予防しながら厳しい夏を乗り越えていきましょう。

参考記事:ナショナルジオグラフィック
おすすめ動画:福岡市健康づくりチャンネル「新生活の熱中症予防」
この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

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