「https://mindful-health.co.jp/info/wp-content/uploads/2022/07/mockaroon-bzLhhI3MpYY-unsplash.jpg」のアイキャッチ画像 糖質のとりすぎはうつ病のもと?日本人の若い女性が陥りがちな糖質過多の罠

糖質のとりすぎはうつ病のもと?日本人の若い女性が陥りがちな糖質過多の罠

「最近、なんだか不安になりやすい」「ちょっとしたことでイライラしてしまう」など……メンタルの不調を感じていませんか?

実は、さまざまな研究から「糖質のとりすぎ」はうつ病リスクを高めることが示唆されています。とりわけ、日本人の痩せ型の若年女性にその傾向が強くみられるようです。

「私は太ってないから」「お菓子を食べてる分、ご飯を抜いているから」といって、糖質を多く摂っている方は要注意。知らずしらずのうちに、糖質があなたの心を蝕んでいるかもしれません。

今回の記事では、医師が「糖質のとりすぎとうつ病の関係」について解説します。

目次

糖質のとりすぎはうつ病を招く

美容や健康に関心の高い方なら、糖質を控えた食生活を意識しているのではないでしょうか?

糖質の摂りすぎは、肥満やさまざまな不調につながることが分かっています。さらに新しい研究では、糖質の摂りすぎがうつ病に関係することも分かってきました。

日本人の若い女性はうつ病リスクが高い

さまざまな研究から、日本人の若い女性で糖質の摂りすぎとうつ病の関連性が示唆されています。

日本人の中年女性では、有意差は見られませんでした。

2021年11月11日に発表された公益財団法人「東京都医学総合研究所」の研究によると、思春期における砂糖の過剰摂取が精神疾患(統合失調症、双極性障害)の発症リスクになりうることを実証しています。また、厚生労働省は「糖尿病患者はうつ病になりやすい」という情報を発信しており、糖質の摂りすぎによるメンタルへの影響は確かにあると考えられるでしょう。

コンビニの最新お菓子やSNSでトレンドのスイーツなど……若い女性は、栄養よりも魅力的なおやつに飛びついてしまうもの。仕事や学業が忙しく、手軽に食べられるおにぎりやパンだけしか食べていないことも考えられるでしょう。

参考:精神疾患の新たなリスク要因(砂糖の過剰摂取)と表現型(脳毛細血管障害)を発見|国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
参考:糖尿病とこころ|e-ヘルスネット

BMI20未満の痩せ型女性はとくに要注意

筆者が産業医として健康診断結果を多数見ていく中で、気づいたことがあります。

若い女性の中でもBMI20未満の方は、タンパク質・鉄分・ビタミンB群不足が実に多いのです。糖質ばかりで、肉・魚や野菜が不足していることも多くあります。

彼女たちの問診票を見ると、「頭痛」「不眠」「肩こり」などの不調を抱えているようです。これらの自覚症状は、栄養のバランスを整えることで改善できる可能性があります。

糖質をとりすぎるとどうなる?

糖質に偏った食生活は連鎖的に栄養障害を引き起こし、疲労感やイライラ、不安などメンタルの不調を引き起こします。

自律神経が乱れる

糖質を摂りすぎると、自律神経の乱れ副腎機能の乱れメンタルの不調が起こりやすくなります。

なぜなら、糖質の過剰摂取によって血糖値の乱高下が起こるからです。

急上昇した血糖値を抑えるために、血糖値を下げるホルモン「インスリン」が過剰分泌されます。すると他のホルモンにも悪影響を及ぼし、自律神経の乱れによるさまざまな不調につながってしまうのです。

糖質依存が起こる

糖質に偏った食生活でタンパク質や脂質が足りなくなると、エネルギーが十分に作れません。

すると、脳はすぐにエネルギー変換できる糖質を欲しがるようになります。

さらに甘いものを食べると、報酬系のホルモン「β-エンドルフィン」が分泌されて幸せな気持ちになります。脳は甘くて幸せな瞬間を求め、常に糖質を求める「糖質依存」の状態になってしまうのです。

うつ病予防のためには何を食べればよい?

私たちが食べるものの選択肢は、米や小麦のような炭水化物だけではありません。普段からご飯やパンを中心に食べている方は、タンパク質や野菜の量を増やすことが心の健康につながります。

タンパク質の摂取量を増やす

ご飯やパン、麺類を減らしてタンパク質の摂取量を増やしましょう。

タンパク質は肉や魚、卵や豆に多く含まれます。

タンパク質は筋肉や内臓、肌や髪の毛などを構成しています。さらにホルモンや抗体など、身体機能を調節する機能も構成しており、生きるために重要な栄養素です。

良質な油を積極的に摂る

糖質を減らすときは、脂質もしっかり摂るようにしてください。

糖質からのエネルギーがないときは、脂質が重要なエネルギーの役割を果たします。また、細胞膜を構成したり、生理活性物質として働く栄養素です。

私たち日本人が日頃から脂質を取り入れるなら、ナッツ類やオリーブオイルなど良質な脂質を選んで摂るのもよいでしょう。免疫力アップや美容のことを考えるなら、ココナッツオイルもおすすめです。

「肉や油は太る」は間違い

健康や美容に関心が高い人は「肉や油ばかりだと生活習慣病になるのでは?」「肥満や高血圧になるのでは?」と思うかもしれません。

そこで、動物性のタンパク質と動物性の脂肪を主食にしている部族の例を紹介します。

イヌイット族は、アザラシなどの動物性タンパク質、脂肪が主食です。食事の半分近くを飽和脂肪酸が占めていますが、動脈硬化の生活習慣病で亡くなる人はほとんど存在しません。

また、タンザニア中北部の先住民族であるハッザ族は、ヒヒやヒョウを食料にしています。こちらも動物性のタンパク質と脂肪を主食にしていますが、生活習慣病やうつ病は存在しないそうです。

野菜や果物は食べてもOK

糖質制限といっても、野菜や果物まで制限する必要はありません

なぜなら野菜や果物に含まれる食物繊維は、血糖値の急上昇を抑える作用があるからです。さらに野菜や果物には、ビタミンやミネラルなど、健康に役立つ栄養素を豊富に含まれています。

とくに、ポリフェノールの一種「フラボノイド」を多く含む野菜や果物は抗酸化作用による老化予防が期待できます。タマネギやケール、ベリー系のフルーツなどは、積極的に取り入れるのがおすすめです。

生活習慣の改善もうつ病予防に効果的

 糖質を控えることで心身の調子を整えられますが、食べるものだけで全てを改善するのは困難

食事内容を見直したら、次は生活習慣を見直してみてください。寝る時間や起きる時間、食べる時間を一定にして、生活のリズムを整えるところから始めましょう。

無理のない範囲でいいので、適度な運動を心がけることもおすすめです。人との関わりが希薄になっている方は、ストレスのない範囲で人とのつながりを持つことも心のケアになります。

全部を一度に変えるのは難しいので、できることから1つずつ変えてみることが大切です。メンタルや身体の不調を感じ始めたら、問題が深くなる前にセルフケアを始めてみてください。

糖質のとりすぎに要注意!新しい食習慣でうつ病を予防しよう

多様性のある食事は、心身ともに多くの栄養を与えてくれます。

いつもご飯やパンなど炭水化物を中心に食べているなら、その内容を少し変えてみてください。炭水化物の量を減らして肉や魚を増やしたり、卵や豆料理を加えてみたりすることで、食事のバリエーションは広がります。

いつも甘いケーキやお菓子を食べている人は、デザートに果物を食べてみましょう。旬の果物はみずみずしくておいしいだけでなく、心身の健康と美容に多くのメリットをもたらしてくれるはずです。

いつものルーティーンは心地よいものですが、それが少しずつメンタルを蝕んでいることもあります。たまには心地よさから抜け出して、新しいルーティーンを取り入れてみませんか?

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

関連する記事