孤独は健康に悪い?孤独がもたらす悪影響と「絆」がもたらす健康効果
面倒な人間関係を断舎離して、1人で気ままに生きる選択をする人が増加している現代。
しかし、さまざまな研究から「孤独」は健康によくないことが分かっています。楽だからといって、すべての人間関係を断ち切ってしまうのは、健康面から見るとおすすめできません。
今回の記事では、医師が「孤独による健康への影響」について分かりやすく解説します。人間関係を断捨離しようか迷っている人は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
目次
孤独は健康に悪影響を及ぼす
1人でいるとストレスがなくて、快適に感じることがあるかもしれません。しかし孤独によるストレスを感じると脳がダメージを受け、肥満や免疫力の低下につながる場合があります。
7日間隔離されたハエの研究
学術雑誌「Nature」に掲載された論文によると、慢性的な社会的孤立状態に陥ったハエは、飢餓と睡眠の減少を示すことがわかりました。
論文によると、ショウジョウバエを1匹だけ試験管に隔離すると、エサを過剰に食べるようになったそうです。さらに、隔離されたショウジョウバエは睡眠時間が少なくなっていました。
試験管のショウジョウバエの脳を調査すると、睡眠と食行動に関連した脳細胞の1群が変化していたのです。この実験から、社会的孤立による健康への悪影響が示されています。
孤独が人間の健康に及ぼす影響
社会的な孤立は、人間にもさまざまな影響があると報告されています。
▼孤独による健康への影響 ・抑うつの増加 ・認知機能低下 ・免疫機能低下 ・心筋梗塞のリスク増加 ・脳卒中のリスク増加 |
社会的な孤立は、ハエだけでなく人間の健康にも影響があるのです。孤独によって脳に変化が起こり、肥満や睡眠不足によるダメージを受ける可能性が示唆されています。
食欲や睡眠時間をコントロールするためには、脳の機能を正常に保つことが大切です。毎日誰かと会話して社会的なつながりを持つことは、心と身体の健康を維持するために重要なことといえるでしょう。
日本社会の「絆」文化は健康にいい?
日本では、人とのつながりを重視した「絆」文化が根付いています。日本人の平均寿命が世界1位を保っているのは、「絆」文化による影響とも考えられるでしょう。
社会的なつながりが平均寿命に関与している?
日本人の平均寿命は、戦後急速に世界1位になりました。
ハーバード大学公衆衛生大学院のイチロー・カワチ教授によると、世界一の長寿大国になったのは日本人特有の「社会的なつながりの文化」の影響が大きいとされています。
古くから「向こう三軒両隣」という言葉があるように、日本人は地域のつながりを大切にしてきました。今でも「おせっかい」といわれるような、関わり合いの文化が深く根付いています。
年賀状や親戚づきあいは無駄じゃなかった
お歳暮やお中元、年賀状など……面倒に思えるような日本の古い慣習も、無駄なことではないのかもしれません。
親戚づきあいや町内会など、形式的に見えるようなイベントでも社会的なつながりを強くしてくれています。社会的なつながりが「肥満予防」「免疫力アップ」に効果的と考えるなら、人付き合いを大切にしたくなりませんか?
人との付き合いを断舎離し、1人気ままな生き方を選択する人が増えています。1人で生きるのは確かに楽ですが、健康のことを考えると社会的なつながりを持つことも重要といえるでしょう。
ただし、たくさんの人とつながればいいというわけではありません。よくない人間関係や風習、しきたりなどは適度に切り離しながら、心地よい人間関係を築いていけるとよいですね。
大切なのは「つながり」を忘れないこと
人付き合いは、ときに面倒なこともあるでしょう。
しかし、日本人は古くから社会的なつながりを大切にすることで、心と身体の健康を保ってきました。
大切なのは、人とのつながりを忘れないこと。先祖がいたからこそ私たちが誕生し、私たちの行動が未来の世の中を作っていくのです。
現代的なインターネットによる便利でグローバルなつながりと、日本に古くから根付くご近所のおせっかいなつながり。どちらも私たちを孤独から救い、健康と幸せを高める力があると考えられるのではないでしょうか。
孤独ではなく「絆」が健康を育む
さまざまな研究から、社会的な孤立は健康に悪影響があることが分かりました。
人とのつながりは肥満予防や免疫力の向上に役立ち、私たちの健康を向上させてくれる効果があります。人付き合いが苦手な人は、心地よい人間関係だけでも保ってみてはいかがでしょうか。
ストレスになるような人間関係や、よくない慣習を無理に維持する必要はありません。少しでもいいので心地よいと感じる人間関係を持ち、人とのつながりを感じながら健やかな心と身体を保ちましょう。