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子宮頸がんワクチンの効果とは?ワクチン接種のメリット・デメリット

20歳以上の女性は、子宮頸がんに罹るリスクがあります。

欧米では、ほとんどの女性が10代のうちに「子宮頸がんワクチン」を済まています。しかし、世界中で日本だけが「子宮頸がんワクチン」の摂取を推奨していないのです。

この記事では、医師が「子宮頸がんワクチン」についてわかりやすく解説します。「子宮頸がんワクチン」を摂取したほうがいいのか迷っている人は、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次

子宮頸がんとは

子宮頸がんの原因は、HPᏙ(ヒトパピローマウイルス)という性感染症ウイルスです。

性的接触のある女性なら、50%以上が生涯で一度は感染するとされています。子宮頸がんを始め、肛門がん、膣がんなどのがんや尖圭コンジローマ等、多くの病気の原因になるウイルスです。

▼HPVウイルスが原因になる病気

・子宮頸がん
・肛門がん
・膣がん
・陰茎がん
・尖圭コンジローマ

通常は自然に消えますが、HPVに持続的に感染し続けることで病気を発症するリスクが高まります。

しかしHPVワクチンを摂取すれば、HPV感染と前癌病変の予防効果はほぼ確実です。ワクチン接種のメリットは、デメリットを大きく上回ると考えられます。

子宮頸がんワクチンの効果

2021年11月4日にイギリスで発表されたデータによると、HPVワクチンの予防効果は87%です。

イギリスのキングスカレッジと英国政府は、2006〜2019年までにHPVワクチンによる子宮頸がんの予防率をデータ化しました。すると、ワクチンによって450人の人が子宮頸がんを予防でき、17,200人が子宮頸がんの前癌状態になるのを予防できたのです。

子宮頸がんになるはずの100人のうち、ワクチンによって87人の女性が救われることになります。このデータからも、子宮頸がん予防のためにワクチンの摂取が効果的であることは明らかです。

世界における子宮頸がんワクチン

欧米諸国では、女性なら10代のうちから子宮頸がんワクチンを摂取することが推奨されています

15歳までの少女90%に子宮頸がんワクチン接種を推奨

世界保健機関(WHO)では、子宮頸がん撲滅のために15歳までの少女へHPVワクチンの摂取を推奨しています。

子宮頸がん撲滅を加速するグローバル戦略として、15歳までの少女に90%のHPVワクチンを摂取させる目標を設定しました。これは、世界で初めて行われる癌撲滅の取り組みです。

アメリカでは子宮頸がんワクチン接種率が向上

アメリカではHPVワクチンの接種率が向上しています。

しかし、2021年における若年成人でHPVワクチンを1回以上摂取しているのは半数未満でした。HPVワクチンの接種率は、他のワクチンに比べて目標に達していないのが現状です。

現在、アメリカでは11〜12歳の少女にHPVワクチンの摂取を推奨しています。2021年のレポートによると、アメリカの子宮頸がん発生率もHPVワクチンによって大幅に低下しているそうです。

日本における子宮頸がんワクチン

日本では子宮頸がんの定期検診を実施していますが、HPVワクチンの摂取は推奨されていません。過剰な報道の影響も大きく、世界的な子宮頸がん撲滅の動きに対して逆行している現状があります。

過剰な報道によって接種率が低い

日本では、HPVワクチンの摂取によって神経障害をきたした少女の症例が大きく報道されました。

このことがきっかけで、HPVワクチンを受けたくない人が増加しました。その結果、積極的なHPVワクチンの推奨が取り止めになってしまったのです。

それ以前の日本のHPVワクチン接種率は70%でした。それに対し、現在のHPVワクチン接種率は0.6%まで減少しています。

世界中で積極的な推奨をやめたのは日本だけ

実は、HPVワクチンの摂取による神経症状の増加は、疫学的に証明されていません。

HPVワクチン摂取の推奨を取りやめたのは、世界中で日本だけです。

日本では、マスコミによる偏った報道が見られることがあります。目立つニュースに意識を向けるばかりでなく、客観的なデータも合わせて正しく情報を取り入れることが大切です。

子宮頸がんワクチンを摂取したほうがいい?

日本では子宮頸がんのワクチンだけでなく、インフルエンザや新型コロナウイルスのワクチンに対しても同様の偏向報道が起こっています。過剰な報道によって副反応への恐怖心が高まり、摂取をためらう人が後をたちません。

ワクチンによって救われる可能性が高い

現代では、死亡の主な原因は生活習慣病です。

しかし、かつては感染症で多くの人が命を落としていました。

日本では、ほんの少し前まで「結核」によって多くの人が命を落としていました。しかし、私たちが結核に怯えなくて済むようになったのは「BCG」という予防接種のおかげです。

世界中では「ペスト」「天然痘」「ポリオ」「麻疹」など、多くの感染症が人々の命を奪ってきました。しかし現代、感染症で死亡せずに済んでいるのはワクチンを打っているからです。

完全に無害な薬やワクチンはない

どんな薬もワクチンも、完全に無害なものはありません

私たちの身近な薬でも副作用があるように、ワクチンにもデメリットはあります。しかし、それでも感染症による死亡リスク減少のメリットが大きいからこそ、ワクチンの摂取が推奨されるのです。

過剰な報道を鵜呑みにして、ワクチンを悪者扱いするのは止めましょう。ときには自分で論文を読み、エビデンスを調べた上で、正しく情報収集することにも挑戦してみてください。

子宮頸がんはワクチンで予防できる!正しく情報収集しよう

子宮頸がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)という性感染症ウイルスによって発生する病気です。

世界では、子宮頸がんを撲滅するためにHPVワクチン接種を推奨しています。しかし日本では、神経症状をきたした少女の症例がマスコミによって大きく取り上げられたことから、世界で唯一HPVワクチンの摂取を推奨していないのです。

しかし疫学的には、HPVワクチン摂取による神経症状の増加については明らかになっていません。

イギリスの新しいデータによると、HPVワクチン接種によって87%が子宮頸がんを予防できることが分かっています。マスコミの偏った報道や情報操作に影響されず、自分の命を守るために正しい情報収集を心がけましょう。

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

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