食事の認知療法「MB-EAT」とは?マインドフルネスと食行動の関係
「マインドフルネス」と聞くと、目を閉じてじっと動かない「瞑想」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
しかし「マインドフルネス」とは、ただ「瞑想」をするだけではありません。「いまここ」に意識を向けるのがマインドフルネスなので、食べることに意識を集中させれば「マインドフルネスな食事」になります。
マインドフルネスに基づいた食事の認知療法「MB-EAT」は、心身のバランスを整えて理想的な身体へ導く方法です。今回は「MB-EAT」プログラムや有効性について解説していきます。
目次
MB-EAT(マインドフルネスに基づいた食事の認知療法)とは?
「MB-EAT」とは「Mindfulness Based Eating Awareness Training」の略で、日本語にすると「マインドフルネスに基づいた食事の認知療法」です。
「MB-EAT」を実践することで、体重減少や血糖値改善に効果が期待できます。
ダイエット効果だけでなく「イライラが軽くなる」「幸せな気持ちになる」など、精神面でも多くのメリットが得られる手法です。
MB-EATのプログラム内容
米国マサチューセッツ州のヨガ施設「Kuripal」では、1回あたり2時間半のレクチャーとワークショップを週1回のペースで10回継続します。
1ヶ月後と約半年後にフォローアップを行い、プログラムのゴールを目指していきます。
▼MB-EATのプログラム内容 ・食べる経験に関する瞑想(空腹感、満腹感、味の満足、食べる引き金) ・食べ物を使った瞑想(レーズン、チョコレート、チーズクラッカー、持ち寄りパーティーやバイキング) ・日々の食事で行うミニ瞑想 ・自己受容や許しの瞑想 ・瞑想や食べる瞑想のホームワーク |
MB-EATで目指す6つのゴール
MB-EATは、以下の6つの領域でゴールを目指します。
▼MB-EATで目指す6つのゴール 認知:食べ物に対する思い込みや気持ちに気づく 身体:空腹感や満足したい気持ちへの過剰反応を抑える 感情:抑うつや不安を抑え、食事の楽しみを増加させる 行動:過食行動を減らす 自分や他者との関係:自己受容や許す気持ちを高める 精神性:自分自身の智慧を養って、目的意識を高める |
MB-EAT(マインドフルネスに基づいた食事の認知療法)の有効性
MB-EATの有効性は、米国衛生研究所(NIH)のサポートを受けた2つの大規模研究によって実証されています。
複数の研究により、MB-EATはこれまでの「認知行動療法」「運動療法」だけを行うよりも、高いダイエット効果を示すことが明らかになりました。
食欲(過食)が抑えられる
過食症に関する研究150人の過食症患者に、9週間のMB-EATプログラムを提供。
すると過食行動をした日が4分の1以下になり、大量に食べる人の数が半分になりました。
参考:NIH Trial (R21): Mindfulness-Based Eating Awareness Training (MB-EAT)Co-PI: Ruth Q. Wolever, Ph.D. |
体重・HbA1c・中性脂肪の減少見られる
体重減少に関する研究114人の肥満患者に、12週間のMB-EATプログラムを提供。
すると体重、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)※、過食の頻度と程度が減少しました。
※HbA1cは、糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセント(%)で表したものです。血糖値の高い状態が続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなるので、HbA1cの数値が高くなります。
参考:NIH-NCCAM RCT(R01): MB-EAT for Weight Loss |
子供・母親・妊娠女性・糖尿病患者にも効果が見られる
糖尿病や子供も含めた肥満患者の研究194人の肥満患者に、16週間のMB-EATプログラムを提供。
すると1年後、体重、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)、中性脂肪が減少しました。
参考:SHINE Study (NIH-funded)UC-San FranciscoPI: Rick Hecht, M.D., Co-PI: Elissa Epel, Ph.D., Co-I: Jean Kristeller, Ph.D. |
MB-EAT(マインドフルネスに基づいた食事の認知療法)のルーツは「禅」の教え
そもそも「マインドフルネス」とは、日本の「禅」の教えをもとに、1970年代にアメリカのジョン・カバットジン博士によって形態化された手法です。
日本では1960年代前半から、瞑想が脳波に及ぼす影響を京都大学で研究されていました。瞑想を行うことで注意力を高め、過剰反応を抑えることが当時の研究で示されています。
インディアナ大学の名誉教授ジーン・クリステラー博士は、1974年から日本に留学し、京都大学でマインドフルネスについて研究されました。
その後ジョン・カバットジン博士とともに「マインドフルネス」「肥満や健康行動」について長年研究を続け、40年以上の研究の集大成として発案したのが「MB-EAT」です。
このことから、MB-EAT(マインドフルネスに基づいた食事の認知療法)のルーツは日本の「禅」の教えといえるでしょう。
参考:Kasamatsu, Hirai. 1966 An electroencephalographic study on the zen meditation (Zazen). Folia Psychiatr Neurol Jpn. ;20(4):315-36. |
マインドフルネスな食事で健康的な美しさを手に入れよう
MB-EATのプログラムを受けた人は体重が軽くなっただけでなく、イライラや不安などの精神的な問題が軽くなっていきます。
MB-EATプログラムにおいて「我慢すること」は逆効果なので、厳しい食事制限や分類はありません。自分をいたわり、大切にすることが最も重要と考えるプログラムです。
MB-EATプログラムを始めるのが難しいなら、まずは「マインドフルネスイーティング」を行ってみてください。「ながら食べ」はやめて食事に集中し、じっくり味わいながら食べることで簡単にマインドフルネスな食事法を実践できます。