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体内時計をリセットする方法とは?体内時計は「脳」と「臓器」にある?

健康への意識が高い人は「体内時計」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?

「体内時計」は、私たちの身体を健康に保つために重要な役割を果たしています。「体内時計」が乱れると生活習慣病や精神の不調を起こすことがあるため、快適に過ごすためには「体内時計」を整えることが非常に重要です。

そこで当記事では、医師が「体内時計をリセットする方法」について解説します。基本的な生活習慣の改善だけでなく、体内時計を整えるための食事についても解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

体内時計とは?

「体内時計」とは脳の中心部下面にある視床下部に存在し、体内をほぼ1日の周期で変化させている機能です。

体温調節やホルモン分泌など、人間の基本的な機能はほぼ24時間リズムで変化しています。光や温度変化のない条件で安静を保った状態でも、「体内時計」によってほぼ24時間のリズムが保たれているのです。

体内時計における2つのリズム

「体内時計」には、脳と臓器が持つ2つのリズムがあります。

「脳の体内時計」は、脳から指令を出すメトロノームのような存在です。

「臓器の体内時計」は、メトロノームのリズムに合わせて音楽を奏でるようなもの。脳からの指令に合わせて、それぞれの臓器が24時間周期を保ちながら働きます。

体内時計が狂うとどうなる?

「体内時計」のリズムが狂うと、体調不良を起こすようになります。

睡眠障害やうつ病、肥満や糖尿病などの疾患につながるのです。

生活パターンによって臓器の活動時間や代謝が変わり「体内時計」は乱れます。健康のためには規則正しい生活習慣を保ち、「体内時計」のリズムを整えておくことがとても大切です。

脳の体内時計は睡眠と深い関係がある

「脳の体内時計」は、睡眠と深い関わりがあります。「脳の体内時計」を正常に保つためには、規則正しい生活習慣や睡眠の質を上げることがとても大切です。

脳の体内時計は光を浴びるとリセットされる

「脳の体内時計」は、光を浴びることでリセットされます

人間を含む哺乳類は、目の網膜から「脳の体内時計」への直接的な神経線維連絡を持っているのです。

朝の強い光が「脳の体内時計」に伝達されると、24時間のリズムを早める方向に働きます。逆に、夜の暗い光が伝達されると「脳の体内時計」を遅らせる方向に働くようです。

起きる時間が寝る時間を決める

「脳の体内時計」を司っているのは、光だけではありません。

起床時間によって、寝る時間が決められるのです。

起床後14〜16時間後に、睡眠ホルモン「メラトニン」が分泌されて眠気が起こります。夜の10時に寝たいなら、16時間前の朝6時に起きればよいということです。

寝る前の糖質摂取はNG

寝る前の糖質摂取は、インスリンの働きを悪くすることが分かっています。

インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種です。食後に血糖値が上昇すると分泌され、血糖値を一定に保つ働きがあります。

しかし寝る前に糖質を摂るとインスリンレベルが低下し、血糖値が急上昇しやすくなってしまうのです。とくに就寝前の2時間以内に糖質を摂ると、血糖コントロールが悪くなってしまいます。

糖尿病の人は、遺伝子変異によってメラトニン分泌が増加している人が多いようです。メラトニンの分泌が多い時間帯に糖質を摂ると、身体へのダメージが大きくなります。

インスリンは「臓器の体内時計」を司るホルモンなので、インスリンの働きが悪くなることで「脳の体内時計」にも悪影響を及ぼす可能性があります。肥満予防や糖尿病予防、そして「体内時計」を整えるためにも、寝る前の糖質摂取は避けたほうがよいでしょう。

参考:Randomized controlled trial offers insights on how the timing of dinner and genetics affect individuals’ blood sugar control

臓器の体内時計は「腸」が制御している

「臓器の体内時計」は「腸」が制御しており、食べることで周期がリセットされます。

朝食が臓器の体内時計をリセットする

「臓器の体内時計」は、腸に食べ物が入ることでリセットされます。

朝起きてからしばらく食事をしないと「脳の体内時計」と「臓器の体内時計」のリズムに乱れが生じてしまうようです。その結果、体調不良や睡眠障害、うつ病や糖尿病などの原因につながります。

インスリンが体内時計を調整する

腸は、インスリンのシグナルを介して「臓器の体内時計」を調整します。

インスリンが分泌されることで「臓器の体内時計」がリセットされるのです。起床後1時間以内に糖質を摂取すると、「脳の体内時計」「臓器の体内時計」のリズムが一致しやすくなります。

マウスの実験によると、栄養素を単体で摂取するよりも、バランスのとれた食事のほうが「臓器の体内時計」のリセット効果が高いようです。さらに、バランスのよい食事の中でもGI値が高い食材を摂ることで、リセット作用を起こしやすいことが報告されています。

炭水化物の中では、消化が早くインスリン上昇を促す糊化でんぷんを含む食材が効果的です。このことから、朝食に炊きたてのご飯を食べることは「臓器の体内時計」の観点から考えると非常に効率的であると考えられます。

腸の体内時計を整える朝食とは

「臓器の体内時計」を調整するためには、朝食で適度な糖質を摂取するのがおすすめです。穀物や果物などからバランスよく糖質を摂り、インスリンの分泌を促しましょう。

野菜や果物で食物繊維を摂ろう

朝食におすすめな食材は、野菜やフルーツです。

野菜やフルーツは糖質と一緒に食物繊維が摂れるので、血糖値の上昇をゆるやかにしてくれます。ビタミンやミネラルも一緒に摂れるので、身体にとってはいいことばかりです。

とくに朝のフルーツは、少量でも十分に体内時計をリセットする効果が期待できます。ただし糖質の摂りすぎは逆効果になるので、朝からフルーツの食べすぎには注意しましょう。

朝食におすすめのフルーツ

イチゴやブルーベリーなど、ベリー系はポリフェノールやビタミンCを多く含みます。糖質も多すぎないので、朝食にぴったりのフルーツです。

また、リンゴもポリフェノールを多く含み、食物繊維が豊富なので血糖値の上昇をゆるやかにしてくれます。

ミカンにはビタミンCやβクリプトキサンチンという酸化を抑える成分が豊富で、食物繊維も多いのでおすすめです。ミカンを始めとするシトラス系の香りには、朝の目覚めをよくする作用も期待できます。

バナナは糖質が高めですが、吸収がゆるやかで中性脂肪になりにくいのでおすすめです。さらに「トリプトファン」が含まれているので、ビタミンB6と結びついてセロトニンの合成を促してくれます。セロトニンは、睡眠ホルモン「メラトニン」に変換されるホルモンなので、「脳の体内時計」の調整にも効果的です。

朝食にはタンパク質も忘れずに

朝食には、たんぱく質も欠かせません。

たんぱく質は筋肉の合成を促したり、脳ホルモンの材料になったりする働きがあります。セロトニンやGABA、ノルアドレナリンなどの材料になる食材です。

ただし、たんぱく質は一度に吸収できる量が限られています。1回の食事では、体重1kgあたり0.3g程度のタンパク質量を摂るのが理想です。

1日の間でたんぱく質を小分けに摂り、トータルで体重1kgあたり1gをめざしましょう。体重50kgの人なら1回あたりの食事で15g程度のたんぱく質を摂り、1日かけてトータルで50gのたんぱく質摂取をめざすのがベストです。

朝食なら、卵や納豆、魚など多種類のたんぱく質を取り入れることで無理なく達成できます。

糖質のみの食事はNG

インスリンの分泌によって「臓器の体内時計」はリセットされますが、糖質のみの朝食はおすすめできません。

食物繊維が少ない糖質のみを摂取すると血糖値の急上昇が起こり、ピークを迎えた後は急激に血糖値が低下します。この血糖値上昇はあらゆる臓器や血管を傷つけるため、将来的には生活習慣病をきたすことになるのです。

また、血糖値が急低下すると強い空腹感や疲労、イライラを感じやすくなります。その結果、「臓器の体内時計」を調整できたとしても、身体へのダメージの方が大きくなってしまうでしょう。

体内時計のリセットは「脳」と「腸」からアプローチ!

仕事やプライベートで忙しいと、つい夜ふかしや暴飲暴食によって生活習慣が乱れてしまうもの。

しかし「体内時計」が狂うと生活習慣病リスクやメンタルの不調が起こりやすくなるため、ちょっとした変化を軽く考えるのは危険です。

規則正しい生活習慣を保ち「脳の体内時計」「臓器の体内時計」のリズムを整えておくことで、健康的な状態を保ちやすくなります。起床時間や就寝時間、朝食の時間や食事内容のポイントを押さえて、快適に過ごしやすい身体をめざしましょう。

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

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