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アルコール依存症の症状とは?飲んで暴れるだけがアルコール依存ではない!

アルコール依存症というと、1日中飲酒していたり、飲んで暴れたりするイメージがありませんか?

実は「眠れないから」「毎日なんとなく」と日常的に飲酒してる人も、アルコール依存症になっている可能性があるのです。寝汗・不眠・微熱・悪寒・下痢などの症状や、イライラすることが増えてきたら、アルコール依存症かもしれません。

この記事では、医師がアルコール依存症の症状と治療について解説します。

目次

アルコール依存症はどんな病気?

アルコール依存症になると、飲まない時間が待ちきれずにイライラするようになります。休日は、朝や昼からアルコールを飲みたくなってしまうでしょう。

アルコール依存症の症状

アルコール依存症による症状は、メンタルの不調や生活習慣病だけではありません。アルコール分解に負担がかかるため、重大な病気や脳萎縮につながる可能性があります。

▼アルコール依存症の症状例

・寝汗がひどい
・寝つきが悪い
・不快な夢で目覚める
・慢性的な下痢
・イライラする
・人間関係が悪くなる
・肝臓が悪くなる
・肥満になる
・癌になりやすくなる
・脳が萎縮して認知症になる
・末梢神経障害による痛みやしびれ

寝汗がひどくなったり、飲まないと寝つきが悪くなり始めたら、アルコール依存症の傾向にあります。不快な夢で目覚める場合も、アルコール依存症による症状かもしれません。

また、イライラしやすくなるのも特徴です。子どもを必要以上に叱ってしまったり、友人を傷つけるような言葉を言ってしまったり、飲みすぎて翌日の予定に影響したり……人間関係の不和にも影響します。

日曜日に昼からダラダラとお酒を飲んでいたら、月曜日の仕事を休むことになるでしょう。キャリアアップのために勉強したくても、お酒を飲む方が優先されてしまうため、自己実現ができません。

さらに肥満や肝臓の病気血管の病気や癌など……重大な病気に繋がる場合もあります。脳が萎縮して認知症になったり、歩行障害になったりするのもアルコール依存症の影響です。

日本のアルコール依存患者は推定109万人

日本のアルコール依存患者は109万人と推定されています。

109万人というと、うつ病の患者と同じくらいの人数です。しかし、アルコール依存の治療を受けている人は4万人程度しかいません。

アルコール依存症はいつの間にか進行していく

アルコール依存症は、いつの間にか進行しているもの。

はじめは仲間との楽しいお酒や、家庭でのリラックス方法だった人がほとんどのはず。それがストレスへの対処方法としても飲むようになり、飲酒が習慣化していきます。

飲むほどにアルコールに強くなり、酔いにくくなるため、お酒の量は増えていくのでしょう。

いつしかアルコールが切れると、イライラ・寝汗・不眠・微熱・悪寒・下痢などの不快な症状が出現し始めます。アルコールを飲むと不快症状は治まるので、離脱症状を避けるために飲酒を重ねていくうちにアルコール依存症が形成されていくのです。

アルコール依存症は治療できる

アルコールも喫煙も薬物も、はじめはストレスを和らげて多幸感を得るために習慣化していきます。充実した人間関係によって幸福を感じていれば、物質に依存して多幸感を補う必要はありません。

アルコール依存症の薬物療法

アルコール依存症は、薬物治療で改善できます。2021年6月時点で、日本で承認されている治療薬は4種類です。

▼アルコール依存の治療薬
抗酒薬お酒を飲むと、頭痛や嘔吐などの不快な反応を引き起こす。飲んでも気持ち悪くなるため、心理的に断念しやすくなる。
アカンプロサート飲酒欲求を抑制する薬。断酒をしている人が服用すると断酒率が上がる。飲酒している人が服用しても飲酒量が少なくなる効果はない。
ナルメフェン飲酒している人が服用することで、飲酒量を低減させる効果がある。軽度の依存症や中間的な目標として、厳守を目指す。
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬、睡眠薬アルコール離脱衆生への治療として使われる。脳内のGABA受容体に作用し、不安やせん妄、てんかん発作などの離脱症状を軽減する

アルコール依存症の薬物治療は、患者が積極的に治療に参加することがとても大切です。毎朝家族の前で薬を飲む、服用したかどうか第三者がチェックするなど、工夫することで治療効果アップにつながります。

また、薬物治療と他の心理・社会的な治療を組み合わせることも効果的です。自助グループへの参加も、アルコール依存症の治療効果を高めることにつながります。

参考:アルコール依存症の薬物療法|e-ヘルスネット(厚生労働省)

マインドフルネスによるケア

お酒を飲んでハイな状態を目指さなくても、私たちは十分喜びに溢れた世界に生きています。

家族や友人と楽しくおしゃべりしたり、1人でゆったりとくつろいだり……お酒がなくても幸せになれることがあるはず。目の前のことに意識を向けて、「いまここ」にある喜びを見つけてみてください。

とはいえ、毎日のストレスや辛い出来事があれば「お酒で気持ちを紛らわさないとやっていられない」と思うこともありますよね。そんなときは、依存症を理解して温かい気持ちで受け入れてくれるグループに参加し、脱依存について学ぶことも検討してみてください。

あえてアルコールを飲まない「sober curious」

現代の若者は、あえて飲まない選択「sober curious」というスタイルを楽しんでいます。

「sober」はシラフ(お酒をのまない)、「curious」は〜したがるという意味です。2つの言葉をつなげると、「あえてシラフでいたがる」という意味になります。

アルコールに頼らなくても楽しめるのが、現代における若者のトレンドです。先進的なお店では、「sober curious」に対応したノンアルコールカクテルのメニューも増えています。

「少量の飲酒が身体にいい」といわれていたのは、もう昔の時代。健康や幸福感を高めるためにも、若者のトレンドを取り入れてみるのはいかがでしょうか?

アルコール依存症の症状が出たら治療しよう

「ストレス解消になるから」「人間関係を保つため」など、言い訳して飲酒していませんか?

自分を正当化してアルコールを飲み続けても、体の不調には目をそらしていられません。アルコール依存症は、むしろ人間関係の悪化や重大な病気につながります。

アルコール依存症は誰でもなりえるもので、決して恥ずかしい病気ではありません。治療すれば治るので、少しでも症状に心当たりがある人は医療機関に相談してみてください。

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

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