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「蒸留酒は太らない」は嘘?アルコールのカロリーは太る原因になる?

「ダイエット中でもお酒を飲みたい」「アルコールのカロリーは太らないって本当?」など、ダイエット中の飲酒に関して悩んでいるのではないでしょうか。

コンビニやスーパーに行くと、一見ダイエットによさそうな「糖質ゼロ」のお酒も多く販売されています。「蒸留酒なら太らない」「少しなら身体にいい」という説もあり、お酒を飲んでいいのかどうか迷ってしまいますよね。

実は「糖質ゼロ」のお酒でもカロリーは意外と多く含まれているため、正しく認識していなければ太ります。この記事では、医師が「アルコールのカロリー」について解説します。

目次

アルコールのカロリーはどれくらい?

ダイエット中でも「糖質ゼロ」ならOKとして、アルコールを飲み続けている人も多いのではないでしょうか。しかし「糖質ゼロ」のアルコールでも、カロリーオーバーになれば太ってしまうので注意が必要です。

純アルコール1gあたり7kcal

純アルコール1gあたりのカロリーは、7kcalです。

アルコールのカロリーは、蓄えられずに発散される「エンプティーカロリー」といわれています。「エンプティー」は「空っぽ」という意味なので、お酒のカロリーは太らないと思われがちですが、それは誤解です。

アルコールが「エンプティーカロリー」といわれているのは、身体に必要な栄養素が空っぽのエネルギーだから。つまり、栄養素は含まれなくても、カロリーは含まれるのです。

200kcalのアルコールを飲んだら、200kcalの食べ物と同じだけのカロリーを摂取しています。そして「消費カロリー<摂取カロリー」になれば、当然のように太ってしまいます。

500ml缶のお酒2本で1食分のカロリーがある

ビールやストロング系のチューハイを飲むのは、夕飯を2回食べるのと同じくらいのカロリーがあります。

お酒の種類純アルコール量糖質カロリー
一般的なビール500ml20g18g232kcal
ストロング系酎ハイ500ml36 g0g270kcal

ビールもストロング系チューハイも、500ml缶を2本飲んだらコンビニ弁当を食べているのと同じ。夕食後にビールやチューハイを飲む人は、1日4色食べていると認識してください。

毎日少しのアルコール摂取でも肥満リスクが上がる

韓国2700万人の大規模な研究によると、アルコールは少量でもメタボ・肥満リスクを上げることが分かりました。

▼韓国の大規模研究で分かったこと

・ビール350ml缶を毎日半分〜1本純アルコール(7〜14g)飲む人は、メタボ・肥満リスクが10%上昇した
・純アルコール24g以上を毎日摂取している男性は、メタボのリスクが42%上昇、肥満リスクが34%上昇した

ストロング系の缶チューハイを500mlのんだら、純アルコールは36g。つまり、500ml缶1本飲むだけで肥満リスクが34%以上増加してしまうということです。

韓国人の体質は、日本人の体質と似ています。さらに参加人数が非常に多い大規模研究なので、日本人に対しても信頼できるデータといえるでしょう。

アルコールに関する誤解

世間には、アルコールに関するさまざまな誤解が溢れています。正しく理解しておかないと、健康と美容を損なうことになるので注意が必要です。

「蒸留酒は太らない」という誤解

「糖質ゼロの蒸留酒は太らない」として、ダイエット中でもお酒を飲み続けるケースが多くあります。

しかし「糖質ゼロ」だからといって、太らないわけではありません。「糖質ゼロ」であれば糖質の摂取量は下げられますが、アルコール自体のカロリーは含まれているのです。

アルコールとおつまみのカロリーを合算すれば、かなり高カロリーになってしまいます。ダイエットの基本は「消費カロリー>摂取カロリー」なので、摂取カロリーが消費カロリーよりも高ければ「糖質ゼロ」でも太るということです。

「酒は百薬の長」という誤解

「酒は百薬の長」という言葉がありますが、これは昔の中国の皇帝が考えたキャッチフレーズのようなもの

つまり「バレンタインにはチョコレート」「ハンバーガーにコーラ」といったフレーズと同じです。お酒は薬にようにとてもいいものだから、どんどんお酒を飲もうと国が販売を促進したときの言葉だといわれています。

このフレーズを考えた王莽という皇帝は「中国史上最強のペテン師」といわれており、利権を得ては国政をめちゃくちゃにしたと酷評されている人物です。しかし1000年経った今でも現代人は「いにしえから伝えられるお酒にまつわる正しい教え」と信じているのですから、王莽は人の心を操ることに長けていたのでしょう。

「酒は百薬の長」は徒然草で正しく伝えられている

吉田兼好が書いたとされる随筆・徒然草の第245話第百七十五段で兼好は、「酒は百薬の長」という言葉に関する正しい認識が記されています。

「百薬の長とはいへど、万の病は酒よりこそ起れ。 憂忘るといへど、酔ひたる人ぞ、過ぎにし憂さをも思ひ出でて泣くめる。 後の世は、人の智恵を失ひ、善根を焼くこと火の如くして、悪を増し、万の戒を破りて、地獄に堕つべし。」

徒然草 第245話 第百七十五段
▼現代語訳(訳:山下あきこ)

「酒は百薬の長っていうけど、お酒でたくさんの病気が起こるよね。酒は悲しいことを忘れさせてくれるっていうけど、酔ってる人って昔のことを思い出して泣いたりしてるし……。人に酒を飲ませるような人は、生まれ変わったら頭はまともに働かず、前世での良い行いも消え失せ、悪事ばかり働いて仏様の教えも破って地獄に落ちるに違いないよ。」

兼好法師は、祝いの席などでお酒を飲まされることを「悪習」と認識していました。お酒を飲んだ後と人々のみっともない行いや、体調の悪さについて、よくないことであると認識していたのです。

アルコールとの適切な付き合い方

美容や健康、そして良好な人間関係のことを考えるなら、お酒は控えるのがベスト。完全に禁酒しなくてもいいので、お酒に関する認識を改めて、アルコールと上手に付き合っていきましょう。

お酒は「薬物」と認識しよう

お酒は、「薬」ではなく「薬物」だと認識するといいでしょう。

筆者が医師として多くの健康診断結果を見ていると、飲酒している人は数値が悪い傾向にあります。

▼飲酒者の健康診断でみられる傾向

・肝機能の数値が高い
・中性脂肪が高い
・体重が増加し続けている
・血糖値が上昇し続けている

そして、お酒をやめたら改善することは分かっていても、やめる気がない人がほとんどです。身体に悪いと分かっていても飲んでしまうのは、「薬物中毒者」と同じように依存の証拠といえます。

休肝週を作ろう

お酒が好きでやめられないなら、「休肝日」ではなく「休肝週」をつくりましょう。

「休肝日」くらいなら我慢できても、「休肝週」となると勇気がいるもの。いざやってみると、自分がどれだけアルコールに依存していたか気づけるはずです。

「休肝週」が終わった後は達成感と、体調の変化を実感できます。寝起きのよさや体重の減り具合など、驚きと喜びがあるでしょう。

そして次にアルコールを飲むときは少量で酔っ払いやすくなるので、過剰な飲酒を防げます。「休肝週」に慣れたら「休肝月」をつくり、少しずつアルコールフリーな生活に慣れていくのがおすすめです。

アルコールなしの快適さを実感しよう

筆者も医師でありながら、若い頃はよくアルコールで失敗していました。しかし、そんな私も今ではお酒をやめています。

お酒のない生活は、不思議なほど自由でいい気分。はじめは我慢している感覚がありましたが、1ヶ月くらい飲まないでいると、飲みたい気持ちがすっかり消えていきました

お酒を飲むとおつまみを食べたくなりましたが、今では夜のおやつを食べたくなる衝動もなくなりました。お腹はすっきりとして、翌朝の目覚めもよく、毎日がとても快適です。

人にお酒をすすめることの考え方も大きく変わり、アルハラへの理解も深まりました。お酒を飲む人は「一緒に楽しく飲もう」という気持ちでも、進められた方は「断りにくいから仕方なく」と思っている場合もあるのです。

肥満リスク、病気リスク、依存リスク、そしてアルハラのリスク。お酒をやめた今だからこそ、毎日のようにお酒を飲んでいた頃を振り返って反省することが多くあります。

アルコールにカロリーはある!ダイエット中は控えるのがおすすめ

本当の幸せや喜びは、お酒がもたらすものではなく、自分の心が作り出すもの。

アルコールを飲むことで一時的に心の苦しさを忘れ、楽しい気分になれるかもしれません。しかし実際には、少量のアルコールでも健康を損ない、他人を傷つけてしまう可能性もあるのです。

すっきりとした心と身体を手に入れたいなら、アルコールはできるだけ控えるのがおすすめ。お酒は「カロリーがある薬物」と認識し、依存するほど飲みすぎないことを心がけましょう。

この記事を書いた人 医師 山下あきこ

1974年、佐賀県生まれ。二児の母。内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医、医学博士。アメリカ神経学会会員でもある。1999年…

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